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ご無沙汰してます

お久しぶりです。
いつのまにか、三月も半ばで、明日はホワイトデーですね。
とはいっても、何も書きあがっていなくて更新は無いのですorz
体調は随分良くなりましたが、ネットの回線がちょっと調子が良くなく最近とほほな感じです。
それは横においておいて。

自分の中で一月はじめに投稿予定だった話の続きをGehenさんにようやく投稿することができました!
ファイルにしてから読み直してて、見つけた矛盾とつじつまあわせと書きたいことを直しているうちに、自分でもちょっとわけがわからなくなってしまって結果的に難産な代物に成り果てました。
手直しせずに、素直にhtmlにしていれば、一月くらい早く投稿できたかも…と反省することしきりです。
しかしその場合、矛盾は放置になっていて、
さあ!
どうやって広げた風呂敷たたみましょう!!
とるべき道は決まっているので、後はいかに矛盾無くエピソードをつなげるか、ですNE☆
な状態になること請け合いだったので、これで、よかった、のですよね!
うん!
後はシンちゃんとアスカを出撃させて、マグマにドボーンさせて、温泉にもドボーンさせてあげるだけ~♪
がんばろっと。
温泉良いですよね、温泉。
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tag : つぶやき

悶絶。

友人からお見舞いと称されて、動画を紹介されました。
いわく、
「あんた、モス派だよね?これわかる?」
だそうです。
見てみました。
悶絶しました。
体力落ちてる自分にはちょいと刺激の強すぎるお見舞い品でした。
エヴァはまったく関係ないのですけど、わけのわからなさがどこかの誰かを髣髴とさせていて、えらい楽しませていただきました。
こちらです↓



東日本出身ですが、「まわし開く」なる言葉を初めて聞きました。
どなたかわかりました方、ぜひ私にもご教授ください(笑)

tag : つぶやき

というか


ご無沙汰しておりますが元気です。
年明け早々体調を崩し、養生しながら勤務する事はやひと月。
気付けば1月が過ぎ去っておりました。
ひと月早!
明けましておめでとうの更新してないのに、もう2月だよっ!
しかも節分だよっ!
何も書けてないよ!
早すぎ!
そしてそろそろ地震から一年経つよ!
そっちも本当に早すぎるよ!!
あっという間の一年だったなぁ。
時が過ぎるのははやいなぁ。
て、黄昏ちゃうよ!

寒さとなれない環境のストレスのせいか、大分体調悪いです。
もう一回入院する?という話も出ております。
なので、いろいろと無理をせず、ゆ~っくりと行動していこうと思います。
また入院するのはごめんです。
病院は嫌いです。
自宅療養のがまだましです。
そして、仕事辞めんのもごめんです。
ええ。
お金を稼ぐって楽しいですよね。
労働は尊いんです。
だけど、迷惑かけない程度に体調は整えないとね。
インフルエンザも流行ってるし、万が一かかった日にゃあ、どうなることか。
まあ、そんなこんなで、ちょっとお休みするかもしれません。
冬はなんだかだめですねー。
発作が出て体力尽きて早く寝るが仕様になってしまって、うまく余力を作って遊べません。
なんてつまらない。
せっかく長野にいるんだから、スケート場とか、スキー場とか、ウィンタースポーツに熱を上げたいのにっっっ!!!!!!


寒さが敵って、どんないじめ?;_;

12/7 (6/7after)

朝。
目を覚ましたい時間にセットした時計と携帯。
その二つの目覚ましが同時に、僕に起床時間だと訴える。
それに気付いた僕は速やかに止めねばならない。
何故なら少しでももたつけば、結構耳敏くて神経質な同居人の耳にまで音が届いて、『安眠を妨害した』と難癖をつけられて散々罵倒されたり、詰られたり、扱き下ろされたりするからだ。
同じ所に住んでいるんだから、相手の生活音が聞こえてくるのは仕ない事なのに。
少しくらい我慢してくれたって良いと思う。
でも、僕はそれを言って同居人に逆らおうとは思わない。
機嫌が悪くなると、彼女はとても喧しいし、僕につっかかってくるようになるから面倒くさい。
あんな風に僕に絡んでくる人間は初めてだ。
僕がむかっとして我慢できなくなるのも初めてだ。
すごくむかつく。
だけど。僕が何かを言い返した時の怒ってるアスカは、気付いてないのかもしれないけど、すごくムキになって、とても子供っぽい事まで言って来てたりする。
そんなときのアスカは、ほっぺたが真っ赤に染まってて、鼻の穴がひくひくしてて、眉が吊り上がってて、青い瞳をきらきらさせてる。
いつもそうだとは限らないけど、そんなアスカをちょっと可愛いと思っちゃう事もある。
基本的にアスカはすごく憎たらしいのに。
でも、明るくて、さっぱりしてて、憎めない。
本当に怒ってる時のアスカは嫌いかもしれないけど。
だって、僕を憎んでるみたいな目をするから。
ちっとも可愛いとも思わなくて、不思議と僕もすごくアスカを鬱陶しいと思う。
今までの僕は、そんな風に自分が感じている気持ちを意識した事も無かったし、突き詰めて考えた事もなかった。そして、それはこれからもするつもりもなかった。
だって、そんな事するだけ無駄だし。
僕なんかを好きになってくれる人なんていないのに、僕が何を思うかを考えたって仕方がないよ。
それに、誰かを好きになっちゃって、その人に期待して、裏切られたりするのも嫌だ。
だから、もしも僕が誰かを好きになるなら、いつでも僕に優しくしてくれる、とても優しい人だけを好きになりたいと思ってた。
だけど、現実って、そんなに優しくないみたい。
わがままで、神経質で、うるさくて、プライド高くて、すぐ大きい事言うくせに、けっこう抜けてて失敗する。
でも、言った事は必ず実現させる時もあるし、その為にどんな努力も惜しまず、すごく頑張る。
結構可愛くて、ミサトさんや綾波よりはちょっと胸が小さいけど、足が白くてすらっとしてて綺麗だ。
そして、加持さんの事が好き。
僕の事は好きじゃない。それは知ってる。
知ってたけど。
知ってたから好きにならなかったのに。
なのに。
僕は今、アスカに期待してる。
アスカが僕を好きだったらいいなって思ってる。
アスカなんかわがままばっかりで、僕になんかちっとも優しくないのに。
何で、こんな事になっちゃったのかな?



僕は目の前で朝から朝食のおかずを巡ってミサトさんと騒いでいるアスカをちらりと盗み見て、気づかれないようにこっそり溜め息を吐いた。
半年前。
僕の誕生日があった。
ここに来るまでは、誕生日は虚しくなる日だった。
だから、僕は誰にも自分の誕生日を教えなかった。
今年の僕の誕生日は、ここでの平凡な日常道り、アスカの我がままに振り回されて、誰からも祝われず、アスカの買い物の荷物持ちにされて、ほんの少し落胆しながら終わった。
終わったはずだった。
変な事があったのは、僕の誕生日の次の日。
前々から予定されていたテストの為に僕は1日ネルフでエヴァに乗っていた。
けれども、機械のトラブルが相次いで、結局、一番重要なテストを終えずに僕は解放された。
もう夜も遅かったけど、まだリニアが動いていたから僕は家に帰る事にした。
なんとなく、がっかりした気分で、リニアの駅のホームで、僕はベンチに座っていた。
僕を家族だって言ってくれたミサトさんなら、僕の誕生日に何かしてくれるかもしれないって期待してたのかもしれない。
それだけじゃなくて、ネルフにいる人達は僕の誕生日を知ってるはずだった。
もちろん、父さんも。
だけど、誕生日だった昨日も、1日中ネルフにいた今日も。
僕は誰にも何もされず、何を言われる事もなく。僕は、心底自分の馬鹿さ加減に呆れていた。
僕の事を気にしてくれる人なんかいないって知ってたはずなのにって。
だから、自分から誕生日の事も、誰にも話さなかったのに、って。
とても冷めた気持ちで、帰るのがすごく意味がない事の気がして、リニアがホームに着いても、ミサトさんの家に帰る気になれなくて座っていた。
結局、僕はそのまま三本のリニアを見送った。
次のリニアが最終かなと考えて、いい加減そろそろ次のリニアで帰ろうって思った時。
ホームに到着した上りのリニアから降りて来た人に僕は驚いた。リニアから降りてきたのはアスカだった。
アスカもすぐに僕に気付いて驚いていた。
僕は、アスカがこんな夜遅くにこんな所に何をしに来たのかすごく気になった。
だって、もう0時近かったんだ。
アスカみたいな女の子が出歩くような時間じゃないよ。
でも、アスカに質問しながら、僕は何となく、テストが中断した僕の代わりにネルフに呼ばれたのかもしれないと思って納得した。
だけど、そうじゃなかったみたいだった。
何故だか分からないけど、アスカは不機嫌で、僕を荷物持ちにして、そのまま帰りのリニアを待ち始めた。
僕にとってはすごく気になる行動だった。
だって、アスカの行動だけ見ると、わざわざ僕を荷物持ちにする為だけにこんな夜中にリニアに乗って、ここまで来たって事になるんだよ?
それとも他に用事があってここまで来て、僕を荷物持ちに出来たから、気が変わって帰る事にしたんだろうか。
とにかく、アスカの行動は謎過ぎて、僕にはよく分からなかった。
持たされた荷物もすごく気になる。
何種類ものコンビニの袋。
何を考えてアスカはこんなにいっぱい色んなコンビニで買い物したんだろう。
それとも、アスカがした買物じゃないんだろうか?
気になって仕方なくて、色んな質問をしたくて仕様がなかった。
勇気を出して僕はアスカに問いかけようとしたけども、逆に何で僕がリニアの駅に居るのかを問いただされた。
僕が、『いつから』をぬかして僕がここに居る理由を言うと、それでもう満足したのか、アスカはリラックスした表情でリニアを待ち始めた。
だけど僕はそれどころじゃない。
だって、僕の疑問は何一つ解明されてないのに増えて行くんだもの。
勝手な事すると怒られるから確認できないけど、コンビニの袋からうっすらと透けて見える感じや冷やっとする温度とかで、アスカに持たされたのはデザートっぽい事が分かる。
こんな夜中に、色んなコンビニで大量のデザートを買う理由って、何…?
そもそも、これ、これから食べるの?
アスカが?
ちょっとでも太ると僕に当たって大騒ぎするくせに???
それともこれからどこかにこのデザート持って行くの?
それなら、ネルフがあるこの駅まで来た意味は???
もっと良く分からないのは、アスカは結局その日、そのまま大量のコンビニの袋を僕に持たせたまま、僕と一緒にミサトさんの家まで帰ったってことなんだ。
しかも、アスカの行動はミサトさんに内緒の行動だったみたい。
仁王立ちして玄関で待ってたミサトさんに怒られてた。
でも、僕の手にあるコンビニの袋が、アスカに持たされた物だって知った途端。
まじまじとアスカを見つめて、ミサトさんの説教がぴたりと止まった。
アスカも珍しく大人しくミサトさんの説教を聞いていたのに、じっとミサトさんに見つめられるともう寝ろとミサトさんを寝室に追い立て始めた。
真っ赤な顔のアスカと騒ぎながら、ミサトさんが振り返りざま僕に『お誕生日おめでとう』と言ってくれたけど、知ってる人に初めてお祝いの言葉をかけてもらったのに、僕はちっとも感動しなかったのは何でだったんだろう。僕の誕生日のお祝いの言葉の事なんか、すごくどうでも良い雰囲気だったんだよね、その時。
ミサトさんは逆上しかけたアスカを宥めてるのかからかってるのか分からないことばかりしてたし、アスカは喧しく騒ぎ立ててる最中だったんだもん。
そう言えば思い出したって感じで言われてもね…。
言葉って、雰囲気が大事なんだなってしみじみと思う一幕だった。
ミサトさんを部屋に押し込める事に成功したアスカに、僕はコンビニの袋を返そうと思った。
でも、受け取って貰えなかったんだ。
返そうとすると物凄い顔で睨んでくるし。自分はいらないから、僕が食べれば?
とか、訳が分からないことまで言い出してた。
アスカが買った物じゃなかったの???
そんな疑問だらけの僕に、アスカは不満そうに寝るって宣言して。
アスカはさっさと自分の部屋に籠もってしまった。
残された僕は、とりあえずコンビニの袋に詰められたケーキを冷蔵庫に入れることにしたんだ。
そうして、ケーキを移しながら、はたと気付いた。
今日は僕の誕生日じゃないけど、ミサトさんから誕生日を祝われた。
アスカからはケーキを押し付けられた。
不意にアスカの変な行動が一本に繋がって、僕は衝撃を受けた。
もしかしたら。
もしかしたらだけど。
ミサトさんがアスカに昨日が僕の誕生日だったって事を漏らしたとしたら?
そして、それを聞いたアスカが、僕に誕生日のケーキだけでも届けようとしたら?
僕はその思い付きに真っ赤になって胸がいっぱいになった。
何種類ものコンビニのケーキ。
誕生日の丸いケーキには遠く及ばないけど。
でも。
たくさんあるコンビニのケーキのひとつひとつに、アスカの気持ちがすっごく詰まってる気がして、僕は震えた。きっと、アスカは僕の誕生日を祝いにネルフまで祝いに来てくれたんだ。
僕は堪えきれなくなって、ケーキを冷蔵庫にしまって、アスカの部屋の前に移動た。
そして、アスカの部屋の襖の前に立ち尽くして逡巡した。
でも、それが、全部僕の勘違いだったとしたら…?
そんな考えが僕の頭にこびり付いて離れなくて、僕はその日、結局何も出来なかった。
だけど、次の日の朝。
勇気を出してアスカに言ってみたんだ。
実は、6月6日は僕の誕生日だったって事。
まるでそれを待ち構えてたみたいにアスカは、それならお祝いしなきゃとかなんとか言いながら、ミサトさんを叩き起こして、朝っぱらから僕の誕生祝いを開始させた。
曰く、『たまたまケーキがここにこんなにあるからよ!』らしい。
真っ赤な顔でそう言うアスカは可愛かった。
胸が熱くなって、苦しくて、でも嬉しくて仕方なかった。
ほんの少しアスカの見方が変わって、何か予感めいた物を僕は感じた。
はずだったのに。
次の日には、アスカはいつも道りの、横暴で、僕の迷惑を顧みない子だった。
一週間経っても、二週間経っても、アスカは何も変わらなかった。
なのに、僕だけが少しだけ変わってしまっている。
気付くと、アスカを視線で追いかけてしまう。
僕はアスカを気にしていた。
だけど、それで、僕は何をどうすれば良いのか。
そんな事ばかりを考えて、気が付くと半年も経ってしまっていた。
ミサトさんとアスカのじゃれ合いを横目に、なんとなくカレンダーに目を移す。
12月7日。
本当に、あの日からちょうど半年後。
不意に、アスカから貰ったケーキの事が思い出されて、いい加減うるさくなってきたミサトさんさんとアスカの仲裁の為に、思い付いた事を口に出してみた。
「そ、そういえばさ!!」
「何よシンジ!後にしなさいよ!今忙しいの!この女、許さないんだから!」
「別にちょっとくらい良いじゃな~い。対した事ないんでしょう?」
「うるさいわね!何でアタシのを取るのよ!シンジのを取ればいいじゃない!」
「そんな事したらシンちゃんが可哀想じゃないの~」
「なんですってぇ!?アタシは可哀想じゃないって訳!?あったまきた!!」
僕がかけた声は見事にスルーされそうで、少し凹んだけども、気を取り直してさっきよりも少し大きな声で言ってみた。
「アスカの誕生日っていつなのかな!!!!」
その途端、水を打ったようにしん、と静まり返った台所に、僕は酷く居心地が悪くなってきた。
何か、悪い事でもしたのかな、僕。
ミサトさんが驚いた表情で僕とアスカを見比べ始める。
アスカは、不思議な表情をしていた。口をぱくぱくさせて、驚いているのか、なんなのか、僕を凝視していた。
「アスカ、あんた、シンちゃんに教えてなかったの?」
呆れたようなミサトさんの言葉に、アスカが真っ赤になって怒鳴りつけた。
「うるさいわね!黙りなさいよ!!」
「はいはい。お姉さんは黙ってますよ~。ねえ、シンちゃん、どうしてそんな事今聞くの?」
ぎゃんぎゃんとミサトさんに噛みつくアスカを適当にあしらい、ミサトさんが僕に質問してきた。
ミサトさんの目は優しく僕を見つめている。
良く分からないけど、お母さんってこんな目をしたりするのかな。
そんな事を思いながら、僕は今更思い付いた理由を話し始めてみた。
「あの、カレンダーをみたら、今日ってちょうど僕の誕生日から半年後で」
「うんうん」
ミサトさんが面白そうに僕の話に食い付いてきた。
「アスカとミサトさんが僕の誕生日を祝ってくれて嬉しかったのを思い出して」
「それで?」
嬉々とするミサトさんとは対称的に、なぜかアスカが挙動不審になっていく。
「べ、別にアタシの誕生日なんてむぐっ!?」
「いいから!それでシンちゃん、どうしたの?」
「ふむ!?むぐぐぐ!!」
ミサトさんが途中で口を挟もうとしたアスカの口を、テーブルから身を乗り出して押さえつけながら僕に続きを促した。
「あの、でも…」
「続きは!?」
正直、ミサトさんに押さえつけられて、テーブルの上でもがいているアスカの方が気になるんだけど、催促された僕は続きを話した。
「僕もアスカの誕生日を祝ってあげたいなって思い付いて…」
だけど、話終えた途端、僕は物凄く恥ずかしくなって来てしまった。
何で、今なんだろう。
もっと違う方法もあったし、きっとネルフで調べればすぐに分かった。
それに何よりアスカに直接聞いてみればよかったんだ。
アスカの誕生日っていつなの?って。
なのに、よりによって、こんな時に、こんなタイミングで。
僕は自分が取り返しのつかない失敗を仕出かしてしまって、ここから消えてなくなりたかった。
だけど、そんな訳にはいかないのは分かっている。
その証拠に僕の顔には血が登ってきて、熱い。
どうしようもなくて、僕は赤らんだ顔を隠すためにいつも道り俯いていた。
「なんだって。アスカ」
すると、ミサトさんの呆れたような、笑っているような声がアスカに向けてかけられた。
その言葉にアスカの反応が気になった僕は、アスカの様子を窺ってみた。
アスカは、ミサトさんから解放されて、ふてくされた表情で、バツが悪そうに視線を泳がせていた。
ほんのりと頬を赤らめて。
視線を落としてぶすくれた表情になるのは、アスカが照れてる時の癖。
それを知ってた僕は、少し嬉しくなる。
アスカは、僕の提案を嫌だとは思ってないみたいだ。
ほっとして、アスカが照れてるのが可愛くて嬉しい。
喜んでくれたのかな。
そんな風に僕は甘い気持ちに浸っていたのに。
「別に。どうだっていいでしょ、アタシの誕生日なんて」
アスカは赤らんだ不機嫌そうな顔のまま、僕から視線を逸らして、床を見据えて、そう、言い放った。
その言葉に、僕の浮ついた気持ちは地に叩き付けられる。
今の言葉は、どういう事?
不安と嫌な予感が僕の頭を駆け巡る。
それを理解するのが恐ろしくて、僕の身体は硬直してしまっていた。
ミサトさんが眉をしかめてアスカを窘めるようにアスカの名前を呼んだ。
「アスカ?」
「何よ!」
挑むようにミサトさんを睨みつけるアスカの頬はまだ少し赤みがかっていた。
「そんな言い方、ないんじゃない?シンちゃんがせっかくアスカの為に…」
「別に頼んだ覚えなんてないわ!」
アスカはずっと赤い顔でミサトさんを睨み付けて、僕の事は一度も見てくれない。
だんだん、僕はいたたまれなくなっていく。
やっぱり、僕なんかがアスカに何かしてみてあげたいって考え自体、間違ってたのかもしれない。
「大した事ないじゃない、誕生日なんて!それにシンジだって、自分の誕生日が2日も過ぎるまでアタシに隠してたじゃない!何でアタシだけ、先に自分から教えてやらなきゃならないのよ!」
だけど僕はそう叫んだアスカの一言に、一つ何か勘違いしていた事に気付いた。
勘違いしていた事が何か、までは把握出来なかったけど。
「え?」
「へ?」
思わず漏れた、僕とミサトさんの疑問符を最後に、キッチンに、沈黙が降りる。
ミサトさんは目をまん丸にしてアスカを見つめ、固まっていた。
アスカは、真っ赤な顔で、これ以上ないくらい不機嫌そうな顔を作って、一生懸命そっぽを向いている。
そして、僕は混乱していた。
どうしよう。
アスカの言葉の意味は分かるのに、アスカが何を言ってるのかが理解出来ない。
僕がアスカに、自分の誕生日を隠してたから、アスカの誕生日を教えてくれない?
何だろう。
何か微妙に変な気がする。
こう、もやもやして、何だか気持ち悪い。
それに、僕、アスカに僕の誕生日を隠してなんて…。
「あああああああ!?」
アスカの言っている半年前の一連の事に思い当たった僕は、すっとんきょうな声を上げてしまった。
それをきっかけに、ミサトさんも動き始めてしまったようだった。
いつの間にか俯きながら、ぷるぷると震えている。
けれど、限界が来たらしい。
「ぷっ、くっ、ふふっ、ははっ、あははははははは!」
ばんばんと机を叩きながら大笑いし始める。
「ミサト!!何がおかしいのよ!!!!」
アスカが今度は怒って真っ赤なまま、ミサトさんに噛みつく。
「だって、だって、アスカ!」
ミサトさんはよっぽどツボに入ったらしく、笑い転げている。
アスカの視線が鋭くなって行くのに僕は気付いていたけれど、何からどうアスカに話せば良いのか分からず、ただ成り行きに任せてしまっていた。
「アスカっ!アスカったら!もしかして、シンちゃんが誕生日を黙ってた事、ずっと根に持って拗ねてたの?半年も経つのに?」
息も絶え絶えの状態でミサトさんが指摘した。
その途端、アスカが爆発した。
「な!な、な、なんでアタシがそんな事根に持って拗ねなきゃなんないのよ!コイツの誕生日なんかどうでも良いわよ!何よ!誕生日なんてたかが1歳年が増える日なだけじゃない、ミサトみたいに!拘るほうがおかしいわよ!祝っても祝わなくても年は増えるんだから!!!!!明日が楽しみね!不愉快だわ!アタシもう寝る!!!!」
怒った顔で真っ赤になって、ミサトさんにそう吐き捨てると、アスカは自分の部屋に駆け込んで行ってしまった。笑い転げていたミサトさんはアスカのその言葉にひくっと痙攣して、笑顔を貼り付けたまま、また固まった。
そして、僕は。
「えっと、その…」
顔が熱くて、穴があったら入りたくなっていた。
さっきのアスカの言葉が頭を埋め尽くしていて、訳もなくアスカと話した かった。
本当だったら、すぐにアスカを追いかけて行きたかったのだけど。
でも。
何となく、ミサトさんがいる前ではそれをしたくなかった。
だけど、気持ちは早くアスカを追いかけたくて、落ち着かない。
そんな僕に、ミサトさんは溜め息混じりに苦笑した。
「ねえ、シンジ君。アスカの誕生日はね、12月4日よ」
「えぇっ、12月4日って、一昨日じゃないですか!」
と、不意に、一昨日、荷物持ちと称してアスカの買い物に一日中引っ張り回された事を思い出した。
それだけじゃない。
おとといは何だかんだと難癖をつけて、アスカは僕にお昼を奢らせたんだ。
その上、一つだけだけど、すごく気に入ったっていう小物を、無理やり僕に買わせた。
あの時は、すごく不愉快で腹立たしく感じたけれど。
だけど、あの時の理不尽さが、今ではすごく大きな疑問に変わった。
あれは、もしかして、僕からアスカへの誕生日プレゼントのつもりだったのかな?
そう思いついた僕は、もう、黙って此処には居られなかった。
一刻も早くアスカの元へ行って。
そして、思いついたことを問いただして。
そして、誕生日おめでとうと言ってあげたかった。
「あ、あの、ミサトさん?」
我慢できずに声をかけると、ミサトさんはニヤニヤと面白そうに僕を見ていた。
「なぁにぃ?」
ちょっと悔しい気もするけれど、仕方ない。
僕は我慢出来なかった。
「後で洗いますから、後片付けお願いして良いですか?」
切羽詰った僕の言葉に、ミサトさんが優しく笑う。
「良いわよ。今日は私が洗って置いてあげるわ」
「あ、ありがとうございます!」
思いがけない申し出に僕は感謝した。
慌てて席を立った僕に、ミサトさんがこう言った。
「シンジ君、アスカに負けちゃだめよ?」
いたずらっぽそうにウインクしてきたミサトさんに、見透かされたバツの悪さを感じながら、僕はアスカの部屋へと向かって行った。
誕生日、おめでとうと言うために。

tag : LAS

あとがき

随分と遅れましたが、アスカさんの誕生日記念更新しました。
この話、半年前から書き始めていたんですけども、なかなか書きあがらずに誕生日に間に合いませんでしたw
でもまぁ、その日に必ず更新しなきゃいけないわけでもないですし、のんびりゆっくり更新しました。
しかし。
最近書きかけの話を量産しちゃってます。
けど、量より質。
そして、書きかけより終わったもののほうがが大事だとつくづく感じますので、広げた風呂敷を少しづつでも確実に畳んでいこうと思います。
さしあたっては、ホワイトデー用の話かなー。
いい加減、あの話に決着つけて投稿したいです。
完成まで後半分。
あぁ。
ここにあのUSBメモリがあったら、もう少し楽なのに…。
くそう、○○め。

tag : つぶやき

拍手返信

09/29 逃亡者さんへ

お返事遅くなりましてすいません!
いつもコメントありがとうございます。
彼女はDQNな性格に設定させていただいているので、きっとご期待に沿えると思いますw
というか、アクの強い性格でなければ、エヴァキャラに太刀打ちできないと思うんですよね。
楽しんでもらえてよかったですw
拍手ありがとうございました。


09/30 能登殿さんへ

お久しぶりです!
返事遅くなりましてすいません。
私もリアル忙しく、同じようにサイトの更新も遠ざかり気味になっておりました。
だけどやっぱりLASはいいですよね(力説)!
またお話しましょうね~^^ノシ
拍手ありがとうございました。


その他拍手くださいました方もありがとうございました。

tag : 拍手返信

情熱4

シンジはアタシのほんの二、三歩後ろに、音もなく立っていた。
シンジの黒い瞳が、微塵も逸らされずにアタシを見ている。
さっきから、ずっと。
アタシはシンジからの、この視線を感じていた。
絶対に有り得ないはずの事態に、アタシは背筋に冷たい物を感じる。
じわじわと、足元から恐怖が忍び寄って来ているように思えて、心細い。
静かにアタシを見つめ続けるシンジが放つ威圧感が恐ろしかった。
逃げ出してしまいたかった。
この先に待っているのは、きっと、アタシが望まないことだから。
「僕にキスした」
けれどシンジの放った一言で、逃げようとしていた弱いあたしは逃げられなくなった。
殴られた頭に残る鈍い痛みのように、その言葉だけが耳に木霊する。
まさか。
まさか、あの時から?
アタシが目覚めた時からシンジは目を覚ましていたの?
「僕を撫でてくれたのは何故?」
シンジは、けっしてアタシから目を逸らさずに淡々とアタシを問い詰める。
そんな風にシンジが、いつもと違うのは。
いつもと違うのは、変えたのは、アタシ!?
全身に震えが走る。
アタシはアタシから、全く逸れず、ぶれないシンジの瞳から、自分の視線を逸らす事が出来なくなった。
逸らせば、捕まる。
そんな確信に、視線を逸らせないまま、アタシは、じり、と後退った。
でも。
アタシが後退った分、シンジがすかさず踏み込んでくる。
「あれも、いつもなの?」
どうして、シンジがあの目をしているのかアタシは理解した。
確実にアタシを捕らえる為だ。
シンジの質問からそう悟ると同時にアタシは身を翻した。
身を翻してシンジから逃げ出す。
けれど、すぐに追いかけてきたシンジに追い付かれる。
そしてアタシは腕を引かれてシンジの胸の中に転がり込んだ。
「離してっ」
シンジの腕の中で思い切り抗う。
そんな事をしても無駄な事は知っているのに、抗わずにはいられなかった。
「嫌だ」
シンジは全身で抗うあたしを押さえ付けて抱きしめる。
頼りない足元の砂浜は、まるでシンジに味方するかのように、アタシの足元を崩し、アタシをシンジにもたれかけさせた。
全身に伝わる馴染み深い体温とシンジの匂いが、アタシの深いところに火をつける。
そのすべてが忌々しくて、でも、このままを望んでしまいたくて、壊れてしまいそうだ。
力強くアタシを拘束するシンジの腕に胸が高鳴る。
「質問に答えて」
抗い疲れて、微かに息を荒げながら、シンジから視線を逸らそうとするアタシを許さずに、シンジがアタシの目を覗き込んできた。
いつの間にシンジはアタシから目を逸らさなくなっていたんだろう。
今ではアタシの方がシンジから逃げている。
全てが砕け散りそうな恐怖を感じて、これ以上アタシらしくない醜態を晒さなくてすむように、黒い瞳から逃れるように瞳を瞑った。
「教えてよ。どうして?」
そして、まるですがるように、大事なことを聞き出そうとするように、必死に大きな掌で包み込んで、アタシの顔を固定しようとするシンジの手に逆らって、思い切り顔を背けた。
それでも、その抵抗も、アタシが痛みを感じないぎりぎりの所で、シンジに手加減されているから出来るものだと感じる。
シンジの腕や、手の動きにはその余裕を感じられた。
夜毎アタシに触れていれば、アタシの力を把握されていても不思議はない。
けれど、そんな風にシンジに情けをかけられた惨めさに、アタシの瞳に涙が溢れる。
嘘を吐くのは容易い。
でも、今の混乱しているアタシでは、真っ直ぐにアタシだけを見ている今のシンジを騙しきれない。
勢いで押し切る事も出来そうにない。
どうしたらいいのだろう。
どうするべきか混乱するアタシに、シンジの問いが降り注ぐ。
「アスカ。どうして眠っている僕にキスしてくれたの?」
答えなんか1つしかないのに。
でも、絶対に教えない。
教えられない。
アタシには、資格がないから。
だからアタシは沈黙を選んだ。
罵倒するためにでも、口を開けば嗚咽が零れそうだから。
縋ってしまいそうになるから。
それだけはしてはいけないから。
してしまえば、アタシはシンジと同じだと気付かれてしまうから。
そうしたら、ここでもアタシの存在意義が無くなってしまう。
いくつもの理由が浮かび、そのどれもが、もう意味の無い物の様にも思えた。
もう、どうなっても構わない。
終わりが来てくれるのなら。
でも、終わりが来る事は、きっと、ない。
だって、これはもう、『終わっている事』なのだから。
「アスカ」
縋るようにきつく抱きしめて来るシンジを受け止めながら、アタシは震えた。
「どうして答えてくれないの?」
アタシの首筋に顔を埋め、耳元で嘆くようにシンジは囁く。
その切ない声に、アタシの心が動こうとしてしまう。
何に、答えろというの?
アタシの意思など、本当は必要としていない癖に。
それなのに、いつもお決まりのずるい手ばかり使ってくるシンジに、ぎり、と唇をきつくを噛み締めた。
口の中に馴染み深いような鉄臭さが広がっていく。
その味はアタシを少し冷静にする。
「アスカ」
シンジが真剣な声で、アタシの名前をもう一度呼んだ。
もう一度両手でアタシの顔を包み込まれる。
優しささえ感じる仕草に、アタシの心臓は高鳴った。
いけない。
これは、危険。
警告がアタシの内からわき上がる。
けれど、アタシの足は根が生えたように固まり、いつの間にかアタシは魅入られたようにシンジの黒い瞳を見つめていた。
普段はまったく感情の揺らぎを感じさせないのに、今は、迷うように、探るように揺れている。
その微かな揺らめきに囚われて逃げれなくなる。
浅ましく望んでしまいそうになる。
そんな資格は、散々シンジを傷つけてきたアタシになんかは無いのに。
なのに。
その資格が欲しくて、欲しくて仕方が無い。
堪えきれない渇望が、言葉に変わろうとするのを必至に押し止める。
行き場を失った情熱が雫となって瞳から溢れた。
「泣か、ないで」
動揺したようにつぶやき、シンジの顔がゆっくりと近づいてくる。
その度にアタシの心臓は期待と警告に激しく波打つ。
そんな自分が浅まし過ぎて、張り裂けそうになる。
でも、シンジの望む事も拒絶できない。
やがて、羽の様にシンジの唇がアタシの目尻に触れた。
その感触を感じながら、アタシは迎えいれるように瞳を閉じていた。
ひとつ、ふたつとシンジの唇がアタシの輪郭をなぞって行く。
慈しまれていると思いたくなるほど、その動きは丁寧で優しい。
その度にぞくぞくとアタシの中に光が走る。
そして、その度に飢えきったアタシの心が騒ぎだす。
もっと、と。
もっとアタシに優しくして、と。
必死にアタシはシンジに訴えようとする。
アタシは、シンジを拒絶したのに。
だって、あの時のシンジは絶対に誰でも良かった。
きっと、あれがアタシじゃなくてもシンジは良かった。
アタシは、シンジじゃなきゃ嫌だったのに。
いつか、いらなくなって捨てられるかもしれないのに、受け入れるなんて出来なかった。
このアタシが。
このシンジなんかに。
でも。
今なら。
ミサトも。
ファーストも。
アタシの他に誰もいないここで、なら。
そういう歓喜が、アタシの中にはある。
同時に、だからアタシは永遠に身代わりにしかなれないと囁く声が聞こえる。
それだから。
だから、アタシは。
こんな風に、優しく揺さぶられて動揺させられるくらいなら、痛みさえ感じるほど手荒く乱暴に蹂躙される方が良い。
そうすればアタシは何も感じなくていい。
考えなくて良い。
アタシはシンジを、シンジの望むことを受け止めているだけでいい。
だから優しくなんてしないで!
そう叫んで罵りたいのに、アタシの唇は戦慄くだけで動かない。
涙が溢れて止まらない。
アタシの言葉にならない言葉を吸い取るように、そっと、シンジの唇が戦慄くアタシの唇に重なった。
暖かくて、柔らかなその感触に、アタシの全身に痺れが走った。

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情熱3

アタシは落胆するほど、このやり取りに何かを期待していた自分に気づく。
そして、あの、赤い海のほとりで目を覚ましてから。
この六年もの間。
シンジに対して、抵抗らしい抵抗を示そうともしなかった自分を思い出した。
その、理由を思い出した。
「別に。あんただから抵抗した訳じゃないわ。あんた、寝てたから。アタシ達以外に誰か居たんだと思っただけ」
嘘をつく理由などない。
この程度のことにまで嘘をついてしまえば、本当に隠したいことを嘘で隠せなくなってしまう。
だから、アタシはシンジの瞳を見ながらシンジに答えた。
そのアタシの答えに、シンジが虚を突かれたような表情で目を丸くした。
「驚いたの?」
かけられたシンジの声が優しいような気がして、アタシは素直に答えていた。
「そうね。怖かったわ」
取り繕う事の無い素直なアタシの答えに、シンジが言葉に詰まり、狼狽えて黒い瞳を辺りに泳がせた。
随分とシンジにも感情が戻っている事を不思議に思う。
いつも、まるで機械のように食料を持ち帰り、そしてアタシを抱くのに。
「その、ごめん。驚かせて」
ごくごく久しぶりに聞いたシンジの口癖に、何故か寛容な気分になる。
胸にこみ上げる熱い物で息苦しくなってきた。
それを隠すように、遠くの水平線に視線を移しながらアタシは口を開いた。
「別に。ここにはアタシ達しかいないのに。それなのに驚いたアタシのほうがおかしいのよ」
そのアタシの答えに、再度シンジは気まずそうに口を閉ざし、そのまま黙って引き倒されたままのアタシを引き起こした。
アタシはその動きに逆らわずに起き上がる。
アタシの掌をすっぽりと包み込む、暖かくて力強い、大きなシンジの掌に、泣いてしまいそうだった。
そして、波打ち際に波が寄せる音だけが響き渡り、静寂が訪れる。
アタシは、酷く疲れた気がして、シンジに止められなければ飛び込んでいるはずだった、薄まり行く赤い水を無言で見つめ続けた。
気だるい気持ちが、それ以外の行動をとることを拒んでいた。
シンジの言うように、本当に、あそこに飛び込んで戻れるのならば、あの赤い命が漂う中の一雫の1つになってしまいたかった。
でも、それはアタシの本当の望みじゃない。
それは、はっきりと自分でも知っていた。
結局、アタシは無い物ねだりを続けて、逃げているのだろう。
アタシの欲しいものは決して手に入らないから。
それがとても辛いから。
だけど、それでも、偽りだと分かっていても、アタシに与えられている物にも執着を感じている自分が、心底浅ましく感じる。
そんな自分が嫌だから。
だからきっと、アタシは楽になりたいだけなのだ。
あそこに眠る事を拒絶したのは、アタシのほうかもしれないのに。
一心に赤い水を見つめ続けるアタシに、珍しくシンジから声がかかった。
「還りたいの?」
感情を抑えているのがありありと分かる冷たい声。
その分、何を考えているのかは分からなくなっていた。
もっとも、何を考えているのかがわからないのは、いつもなのだけれど。
だからこそ、酷く自然にアタシの耳に響いた。
「さあ。還せるの?」
何に、も、アタシにかけられた言葉にも、どんな意味を込めて言われているのかも分からない。
ただ、アタシは感覚的にシンジに出来る事なのか否かを問いかけていた。
シンジは、口ごもるようにアタシの質問を否定した。
「いや」
「そう」
シンジに現状を変える何かを期待などしていなかった。
だから、アタシは素っ気なく答えて口を閉ざす。
そして、何をするでもなく、いつまでも海を見続けていた。
自分でも、なぜこんなにあの赤い海に執着しているのかわからない。
けれど、尽きることなく繰り返される潮騒は、アタシの心を少しづつ穏やかにしていく。
「いつまで此所にいるの?」
波の音に紛れて、シンジが小さくアタシに声をかける。
「さあ。いつもと同じじゃないから分からないわ」
いつもならば、ひとしきり赤い水を浴びて、濡れて冷えた体を抱えて帰路に着いていたはず。
けれど、今日はそれを中断させられた。
だから、これからどうすればいいのか、アタシ自身、初めての事に戸惑っているのかもしれなかった。
自分でもよく判断できないまま、反射的にシンジの問いかけに答えて行く。
「いつもはどうしているの?」
何故かやけに今日はシンジが話しかけてくる。
一体なんだと言うのだろう。
この六年の間、ほとんど会話らしき物もなかったはずなのに。
「別に。どうもしないわ」
「アスカは、いつもここで泣くの?」
シンジの言葉にアタシの息が詰まった。
「あの海はアスカの涙?」
突然、らしくもない歯の浮くような事を言い出したシンジに、アタシは違和感を感じて振り向いた。
シンジが底の見えない黒い瞳でアタシをまっすぐに射抜いていた。
感情の篭らない黒曜石のような目に怖気が走る。
あの目でアタシはいつも貪られている。
慣れた恐怖に肌が泡立ち、諦めが心を支配していく。
ほんの少し身を震わせたアタシに構わずシンジは言葉を続けた。
「涙でLCLを薄めているの?」
らしくもなく突拍子もない事を言い続けるシンジに、アタシは恐怖を抱いた。
怯える心をごまかすようにアタシは頬を歪めて笑みを作る。
「おかしな事いうのね。そんな事、出来る訳無いでしょう」
「じゃあ、どうして海に入るの」
シンジはやけに食い下がる。
無関心、無反応を決め込んでいたシンジらしくなかった。
そこにどんな意図があるのかが見えず、不安を感じながら不思議に思った。
けれど。
「理由なんてないわ。あったとしても関係あるの?」
端的にアタシ達の関わり方を突き付けると、シンジは口を閉ざした。
それ以上の答えがそんなシンジから返るとは思えず、アタシは赤い海に視線を戻した。
少しずつ、夜明けが近い事を空が証明し始めていた。
「関係、あるよ」
突然上がったシンジの言葉に驚いて、アタシは再びシンジに振り返った。

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情熱2

「シンジ」
恐怖したのが馬鹿らしくなるほどの安堵を感じて、アタシは惚けたようにシンジの顔を凝視した。
ここには、アタシとシンジしかいない。
アタシが女で、シンジが男なのだから、当然、アタシを捕まえた男の手はシンジの物であるはずだった。
それなのに、分かりきった事に恐慌してしまった自分が馬鹿馬鹿しかった。
微かに残った涙の残滓が、瞬きと共にこめかみに伝っていった。
「どこに行くの?」
シンジは虚無のような黒い瞳でアタシを見つめて抑揚の無い声で問う。
六年ぶりにアタシにかけられた声だったはずだった。
なのに、何の感慨も浮かばない。
「あんた、起きてたの」
拍子抜けしていて、間の抜けた返事を返してしまう。
そして、シンジ以外の男がいるという恐怖が消えて、酷く安堵している自分を見つけて泣きたくなる。
シンジはアタシを見ていないのに、惨めだった。
シンジの質問と噛み合わないアタシの答えに、シンジの無表情が微かに動く。
「どこに行くつもりだったの、アスカ」
再び問われた質問にアタシは答えた。
「どこにも」
「嘘だ」
「どこにも行く所なんて、無い」
アタシの本心からの答えに、シンジの手に力が入った。
意外なくらいのその力強さをアタシは疑問に思う。
そして六年ぶりに会話をしている不思議を思った。
「それなら。どうして、ここに居るの?」
シンジの瞳には、虚無だけではなく、何か暗く燃えるものを感じた。
その瞳は真っ直ぐにアタシを見つめている。
孵らないはずの想いが、アタシの中で音を立てて動き出す。
それに合わせて胸を締め付けられるような痛みが走った。
「いつも来てたからよ」
教えるつもりもなかったはずなのに、動き出した想いに動揺してアタシは答えていた。
「いつも?」
シンジの表情に動揺らしきものが走った。
シンジの表情が変わるのも、六年ぶりだと思いながら、ただその顔だけを見つめ続ける。
「いつ、から?」
苦渋にみちたような表情でシンジが問う。
「さあ。忘れたわ」
アタシの答えにシンジが質問を変えた。
「習慣なの?」
習慣。
そうと言えるかもしれない、アタシの儀式。
「そうかもしれないわね」
涙を流しながら目覚めた夜には必ずしている。
いつの間にか、それが当たり前になってしまっていた。
そうすると、ひどく落ち着くことに気づいたから。
「泣きながら海に飛び込むのが?」
シンジの苦しげな声に、端から見れば、アタシの行動は身投げも同然な事に気づく。
同時に、シンジの懸念の正体にも気づいた。
自嘲の笑みがあたしに浮かぶ。
「飛び込んでるつもりはなかったけど、そうとも取れるわね」
始めの一回の理由は正にそれだったはず。
それが、いつの間にか、心を落ち着けるための儀式めいたものに変わってしまっていたけれど。
「どうして、泣いていたの」
シンジの質問は、追憶するアタシの心を容赦なく引き裂いて行く。
あまりの痛さに目頭が熱くなって行くのを意地で堪えた。
シンジには、アタシの胸のうちは決して明かさない。
明かしてしまってはいけない。
それがアタシに課せられた物だから。
「別に。何でもないわ」
シンジか沈黙する気配が漂い、辺りを潮騒だけが支配した。
規則的に打ち寄せて来る波に後押しされるように、シンジが再度口を開いて質問してきた。
「僕から逃げようとしたんじゃないの?」
シンジの問いに、アタシはきょとんとした。
そして酷く厭世的な気分になる。
シンジから逃げ切る事が出来ないからこその、アタシの儀式なのに。
でも、それを知るのは、アタシ一人。
アタシの口元には自嘲の笑みが浮かんでいた。
「逃げる?何処に?」
アタシの答えに無言になったシンジは、戸惑いを浮かべて再度問い掛けてきた。
「どうして、僕に、抵抗したの?」
シンジの問い掛けに、アタシは酷く落胆した。

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情熱

暗い闇の中。
アタシは目元に濡れた感触を感じて目を覚ました。
僅かな微睡みの時間から、赤い海の時間に戻る。
慣れた肌触りのシーツの上。
アタシの隣には疲れきってぐっすりと眠っている男がいる。
音も無く流れる涙をそのままに、安らかな寝顔に目を落とす。
そして、酷く空しくなる。
どんなにあたしを見て欲しくても。
こいつはアタシを見ない。
壊れるくらい抱きしめて欲しくても。
こいつはアタシを抱きしめない。
それに、アタシとコイツの間にあった事を思えば、そんな事は笑ってしまって口に出せない。
アタシがどんなにコイツを愛しても、コイツはアタシを愛さない。
なのに。
毎夜。
夜が来る度に。
恋人の様に振る舞い、肌を合わせるこの関係にアタシは疲れきっていた。
一度目が覚めてしまえば、その日はもう眠る事は出来ない。
だから、そんな日の常として、いつものようにアタシは安らかな寝顔を眺めた。
そして、アタシが此所にいる疑問を思う。
それから、眩しい朝日が差し込んで、朝が到着するのを一人待つだけだ。
六年前。
アタシ達は赤い海のほとりで目を覚ました。
先に気がついたコイツはアタシの首を絞めた。
アタシは息苦しさの中で目を覚まし、その中でアタシはシンジを受け入れた。
いつもアタシから逃げ惑っていたシンジの頬を撫でた。
アタシは疲れていたし、シンジにそうされても仕方ない理由を、アタシはいつの間にか理解していたから。
その時に気付いた。
いつの間にかアタシに芽生え、大切に抱えていた想いは、決して孵らない物になっていたと。
かつて。
青い夏の空の下で、アタシはシンジと笑いながら歩いていた事もあった。
その時に感じていた、他愛のない、純粋な気持ちは、アタシ自身の行いで全て台無しになっていた。
だから悟ってしまった。
もう、戻れないのだと。
でも、アタシはそれでも良かった。
ママに遇えた。
それでもう十分だった。
そのはずだったのに。
それなのに、シンジはアタシの首から手を離した。
その途端、孵らないはずの思いに縋ろうとする自分を見つけた。
そんな自分が酷く浅ましく、気持ち悪く感じた。
アタシを拒絶してた癖に、誰かを求めてアタシを呼び出し、そして、またアタシを拒絶したシンジの身勝手さも気持ち悪く感じた。
人が生きる事。
その醜さにアタシは嫌悪を感じて、気持ち悪いと思った。
なのに。
アタシはここで。
いつもこうして、シンジに抱かれて。
アタシはシンジに生かされている。
抱かれる事を抵抗しようとは思わなかった。
その時はそうする事は当然のようにも感じていた。
でも、そこに、お互いに通い合う物は何も無い。
シンジはアタシに何も言わない。
無言のまま女としてアタシを抱く。
その時にしかアタシを見ない。
その時ですら、アタシを見てはいないのだろう。
アタシの存在理由はそれだけだとでも言うように。
それも、アタシがした事を思えば、仕方が無いと諦めてきたけれど。
抑えきれない感情が涙となって溢れて零れる。
どうしてこんなに苦しいのだろう。
どうしてこんなに涙が流れるのだろう。
どうしてこんなに、別れというものを意識するのだろうか。
起きている時には決してしない。
シンジが眠りについている時だけのアタシの秘め事。
微かに寄せられている、眉間の皺がとれますようにと願いを込めて、柔らかな黒髪を梳る。
一撫でする度に穏やかになって行く寝顔に比例して、アタシの胸には切なさがこみ上げる。
そっと、別れの口づけを落としてアタシは寝床から身を起こした。
最低限、体を隠す程度の衣類を纏って、浜辺に立てた小屋から砂浜へと歩き出す。
いつもの日課。
いつもの行為。
流れ続ける涙が頬を伝って、砂浜に染み込んで行く。
始めの頃に比べて、だんだんと薄くなって行くLCLの海を目指す。
夜明けまではまだ遠い。
海が近くなればなるほど、溢れる涙は増えて行く。
潤み、歪みすぎた視界に、アタシは耐えきれずいつものように駆け出した。
そしてそのままLCLの海に飛び込もうとした時。
誰かに腕をつかまれた。
アタシの腕を掴む男の手と、強く引き戻そうとする力を感じ、予想もしていなかった事態にアタシの頭は混乱する。
シンジ以外に、生き残った人間の男がいたというのだろうか!?
アタシの全身が恐怖で凍り付く。
シンジだから、アタシは受け入れた。
シンジだから、平気でいられた。
シンジ以外は嫌だった。
だから、二の腕に食い込む、痛いほどの男の手から逃れようと、必至になって抵抗する。
けれども、力でアタシがかなうはずも無く。
アタシは引き倒されて、全身で伸しかかられてきつく押さえつけられてしまった。
そうして、アタシはようやく、自分が恐怖した男の顔を目にすることになった。

tag : LAS

HP改造宣言!

最近、身の回りがようやく落ち着き、時間が出てきたので、以前から手を付けたかった、HPテンプレの改造を始めたいと思います。
カスタマイズではなく、改造です!
しかも、html、CSS、ついでに、FC2Blogその他を勉強途中のまま、思いつきで強行しますので、不具合その他いろいろ出るかもしれません。
しかし、知らない事に挑戦するとか、やってみたことのないことをしてみるというのは、なぜこうも胸が熱くなるのでしょう。
htmlという、わけの分からない暗号を解読して、駆使している快感のようなものを感じます。
うふふふふふふふふ(゜∀゜)
今から改造完了後が楽しみで仕方がありませんw
どんなHPになるのかしら。

途中経過を生暖かい目で見守ってくださるとうれしいです。

tag : つぶやき

久しぶりに…

いつもお世話になっているGehen Wir!様に、お話を投稿し、公開されました。
連載させていただいているお話ではないのが、私も残念なのですが、ようやく投稿することが出来てほっとしていたりしますw

実は、私、携帯とPCどちらも使って話を書いております。
思いついた文章を携帯で打ち込んで、それをPCに取り込んで形を整えたり、逆に、PCで書いた話の続きを携帯で書いたりと、文章の切り貼りや、道具を組み合わせて話を作ってます。
なので、たまに、携帯やPCから、話の切れ端がぽろっと出てきたりします。
だからどうしたという話なのですけども、こうして、あちこちに話を書き散らかしているので、携帯で書いた話の続きがPCに。
PCで書いた話の続きがUSBに。
USBの中に入っている話の続きが携帯にといった、天然パズルのような様相を呈しております。
しかし。
何をどんな風にどうしようと、私の勝手なので、今まではこの形態のままでも、それで特に問題はなかったのですが、半年前の地震でちょっと困ったことになってます。
今までは、書き散らかした文章のピースが、保存してある先がばらばらでも、とにかくすべて私の手元にあったのです。
時間があれば、それらを繋ぎ合わせて、ひとつの形にしてお話にすることが出来ました。
しかし、今回の地震で、USBがひとつ被災地に取り残されてるのです。
しかも国から制限がかかっているのでめったなことでは取りいけないのです。
非常にいらだたしく、そのような状況を作り出した要因すべてが憎らしく感じることもあります。
USBに入っている話の続きを無視して、新しく書き直してしまおうと、何度か試みてみたのですけれど、やはりあまり進みません。
どうしようかな、と逡巡していたところ、先日、二回目の一時帰宅を敢行することが出来ました。
取り残してきてしまったUSBを取りに戻ったようなものだったのですが、表示される線量に家族が怯えたため、荒れ果てた家の中から小さいUSBを発掘することは叶いませんでした。
しかし。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
私的にはそんな感じで、結構覚悟決めてもう一度行ってきたのですけど、家族的には違かったようでw
時間経っているし、低くなっていることを想定していても、高くなっていることは想定の埒外だったようです。
とはいえ、収穫はありました。
地震の際に手放してしまった携帯を発掘してくることが出来ました♪
USBほどではないのですが、話の切れ端が眠っているので、まあまあ良かったことにしておきますw
しかし。
○○めー。
という気持ちが消えるのは、汚染物質を解き放ったものと、汚染物質そのものが消えるまで続くことでしょうね。

tag : つぶやき

第九話

押し黙ってしまったシンジに、彼女はだんだんと居心地の悪さと申し訳なさが込み上げて来ていた。
シンジが自分の問いかけに即座に答えられるような子では無い。
その上、死と向かい合わせになったばかりなのだ。
それを知っていて、直ぐに答えの出せないような選択を迫った。
罪悪感を感じない訳はなかった。
けれど、彼女は後悔しつつも、シンジにした質問を撤回しようとは思えなかった。
だけれども、その質問をするタイミングが間違っていたと認めていた。
後悔と罪悪感が彼女にのし掛かる。
せめて、シンジに答えをださせるのは先延ばしにさせるべきだろうと、そう思う。
この有り得ない状況に浮かれ、状況を少しでも早く改善させる為に自分の意思で動ける状況を早く作ろうと焦り、感情のまま碌に状況や自分の行動が及ぼす結果を考えずに行動してしまった事を、彼女はとても恥じていた。
(あたし、一体何をしてるんだろう。)
シンジを守りたいのに。
シンジ達を護ろうと決めた筈なのに。
今、このタイミングで、死にかけたばかりのシンジに、答えの出せないデリケートな選択を迫るのは、シンジの精神を追い詰める事に繋がるのでは無いだろうか?
少なくとも、疲弊はさせるだろう。
決して、シンジを傷つけたかった訳ではなかったけれど。
もしかしたら、深く心に刻みつけてしまったかもしれない。
父を許すか、許さないか、復讐するか、復讐しないかという葛藤を。
何をどう考えたとしても、質問のタイミングが甚だまずかった。
(ああああああ…)
内心頭を抱え込む。
自分の浅慮がとことん恨めしい。
恨めしいが、シンジ自身が決断して選んだことならば、彼女はゲンドウを許すも許さないも、復讐するもしないもどちらでも良いと本気で思っている。
倫理観からすれば、シンジが復讐を選んだのならば、諭し、理を説き、人としてあるべき行動へと導くべきだろうと思う。
けれど、それ以上に彼女はシンジが可愛かった。
一応、諭しはしてみるけれども、それでも止まらなければ、率先して彼女自身が復讐を押し進めてしまおうと考えてしまうほどには。
だって、きっと、復讐の最中に、これで本当に良いのかどうか、シンジはとても悩み苦しむだろうし。
その度に諭し続けて、それでも復讐するというのならば、その時はシンジの手は決して汚さないようにしようと固く心に留めている。
シンジが、自分の生き方を後悔しないようにそれだけはしてみせる。
その場合、身を切られるように辛いが、リツコとレイを、自分の中で真っ先に切り捨て、ゲンドウを苦しめる為の道具にせねばならないだろうと冷徹に思考していた。
だが、同時に、シンジを愛しく思うのと同じくらいの愛情を、彼女はレイに感じている。
だから、そのような事態に陥らないようにしなければ、と強迫観念に捕らわれそうになっていた。
生まれや、育った環境にも関わらず。
人として、無くしてはいけないような大切な物を、隔離されていたからとはいえ、失わずにいられた純粋な子を、どうして嫌いになれるだろう。
例え、その身の内に、ヒトとは違うからこその残虐性を、理解しえ無い程秘めていたとしても。
それすらもまた、彼女のレイに対する愛おしさを募らせる。
そのまま、ヒトとして純粋で、可愛らしく愛おしい、彼女の知る『綾波レイ』のままでいるのも良し。
自分の持つ、残虐性に気付き、彼女の知らない『綾波レイ』になるも良し。
今は真白であるからこそ、レイ自身が選択した、彼女の知らないもう一つの『綾波レイ』の在り方を、彼女に見せて欲しかった。
それには、やはりレイには『越えてはならぬ一線』を越えてもらっては困る。
その為にも、ゲンドウは殺さず生かし、飼い慣らした方が得策だと、彼女は思う。
何よりも、ゲンドウ自身がネルフ総指令にまで上り詰めた手腕と、今の立場は惜しい。
彼のそうした力は、子供達を守る砦として、彼女自身が欲しかった物だ。
僅かに、妬ましさからくる嫉妬と、それにも増して、そういう力を身につけざるを得なかっただろう、ゲンドウに対する憐れみにも似た共感を感じる。
けれど、その共感は、子供達に対する愛おしさとは比べ物にはならない。
それらを強く思う度に、ゲンドウの処遇を決める為の質問の答えをシンジに迫ってしまいそうな自分を、彼女は必死に抑えていた。
答えを迫る事は、シンジに負担をかける事だから。
もっとも、シンジがゲンドウへの復讐を選ぶ確率は、シンジの性格的にとても低いものではあり、彼女の思索は懸念にすぎない。
そして、同時に彼女はアスカの処遇もどうするべきかも悩んでいた。
彼女にとっては、アスカも愛しむべき大切な可愛い娘だ。
駄目な所も良い所も。
事によると、もしかしたらシンジよりも愛しく思っているのかもしれなかった。
だって、アスカは独りきりだ。
本当に、彼女を守ってくれる存在は、この世界にいないのかもしれないのだ。
いたとしても、常に手をこまねく事しか出来ない存在なのかもしれない。
今、アスカの周りには、シンジも含め、アスカ自身がどうなろうとも、気にしない輩が多すぎる。
彼女にはそれは耐え難い事だった。
彼女にとって、シンジも可愛くて仕方なかったけれど、シンジにはアスカよりも慈しんでくれている存在が彼女以外にも幾つか在る。
それらは決してシンジにとっては充分な物では無いが、それでもアスカよりも恵まれていると彼女は思うし、シンジはアスカ程頑なではないので、少し安心出来る。
だけれど、アスカは、頑なすぎる程、頑なな一面を持ちすぎていて、目が離せない。
彼女の知らない所で傷つき、あの、廃人のような姿になってしまうのではという恐怖が抑えられない。
しかし、シンジも放って置くには危なっかしいし、レイに至っては言わずもがなだ。
三人とも、可愛くて、愛おし過ぎて、心配で、どうにかなってしまいそうだった。
そんな自分が、自分の手で、三人の“これから”に修正を加えていける機会を得た事に、彼女は心の底から舞い上がっていた。
舞い上がらない方がおかしい。
彼女はそう、自分を弁護し、納得する。
だがしかし。
それらは何もかも、実は自分が犯してしまった先ほどの失態から逃げて、傷付かないように言い訳する材料を探しているだけなのでは、と不安になる。
彼女は知らず知らず、深い深い溜め息を吐いていた。
疲れきった老人のような彼女の溜め息に、シンジがピクリと反応した。
そのシンジの動きに、彼女は愛おしくなり微笑んだ。
シンジの一挙手一投足に瞬間的に湧き上がる、この温かく優しい気持ちはきっと間違いじゃない。
彼女は自分の正しさを確認し、安心する。
その瞬間、彼女はあれこれ考える事を止めた。
彼女自身が高揚を感じていて、自分では疲れを感じて居なくても、今置かれている状況を考えると、とんでもない状況だ。
だから彼女の精神も、同じような体験をしているシンジの精神も疲労しているに違いない。
疲れている時にあれこれ考えても良い案は浮かばない。
そういう時は寝てしまうに限る。
寝て、心身の疲れを癒やせば、もう少し良い方法を思い付く事もあるだろうし、逆に状況が何らかの進展を見せているかもしれない。
そうなったらそうなったで、自分がこれからこの子達の為にどう行動するのか、また、一から組み立て直せば良いのだ。
彼女は、まだシンジの中に入り込んだばかりなのだから。
だんだんと気分が上向きになった彼女は、一つ頷いた。
(それに、シンジにも考える時間は必要よね?)
いや、絶対必要だと心の中で断言し、口を開いた。
「シンジ」
彼女に名前を呼ばれたシンジは、びくりと反応した。
その怯えた仕草に、ふと苦笑が漏れる。
「すぐには、決める事なんて出来ないわよね」
「え…」
呆けたような呟きに、彼女の胸にちくりと罪悪感が過ぎる。
この提案は一時しのぎでしかなく、あまり時間もあげられない。
彼女が、シンジ達にしてあげたい事をする為には、避けては通れないのだから。
「ごめんね。少し急ぎ過ぎちゃった。だから、明日。私、もう一度同じ質問をするわ。そうしたら、シンジはお父さんにどう関わって行くか、私に教えてくれる?」
意識的に、落ち着いた笑みを浮かべながら、彼女はそう提案した。
「え?」
「一晩ゆっくり考えて?ううん、考えなくても良いわ」
ぐるぐると思い悩んだ結果、彼女は最も簡単な方法を選ぶ事に決めた。
即ち、感情のままに振る舞う事を。
「明日、もう一度シンジに確認して、そうしたら、私がどんなスタンスを取るか決めるから」
彼女がにっこりと微笑むと、シンジがごくりと喉を鳴らした。
自分の身体ではないのに、自分の身体のように感じる、その不思議な感覚を楽しみながら、シンジへの愛おしさを募らせ、彼女は笑顔になる。
「その時に、シンジが感じた事を教えてくれれば良いわ」
彼女の言葉にシンジの身体が強張った。
それに気付きながら、彼女は続けた。
「教えたくなければ、それはそれで構わないわ。その時は、私は私の考えでシンジの身体で行動しちゃうだけだから」
何でもない事のようにさらりと告げて、彼女は固まったままのシンジに補足した。
「あ、その時は、私の行動に対しての不満や異論は、あんまり聞いてあげないわよ?それは覚えておいてね」
そう宣言してしまうと、彼女は随分と楽になっている事に気付いた。
大事な相手を尊重しきれない、我が儘な自分に苦笑する。
だけれど、それが自分だ。
彼女は晴れ晴れと微笑んで提案した。
「さて、シンジ。疲れたでしょう?今日はもう寝ましょう。私に体調は隠せないわよ?」
おどけた口調で装ってはみるが、反面、どの口がそんな事を言うのかと自嘲していた。
それでも、提案しながら彼女はベッドに横になる。
ベッドに横たわった瞬間、身体が鉛のような重さを伝えて来た。
きっとこの疲労感は、シンジが感じていたものだろう。
そう察すると、より一層の罪悪感が彼女を襲い、それを忘れるように瞳を閉じた。
何故か、シンジの抵抗は為されない。
疑問に思いながらも、彼女が微睡み始めた頃。
彼女は、シンジの小さな呟きを聞いた。
「僕は、父さんに。僕の父さんで居て欲しい……」
その呟きが耳に届いた瞬間。
彼女の眠気はばちりと覚め、押さえきれない程の歓喜が突き上げて来た。
(う~ふ~ふ~ふ~)
ニヤリと頬が歪んでいくのを押さえられない。
「そう、わかったわ」
彼女は笑みを抑えるのを止めて、しっかり、はっきりと了承した。
そして満面の笑みを浮かべた。
「私は全力でシンジの願いを叶える為に力を尽くしてあげる。だから、シンジも協力してね?」
「え…」
思わぬ言葉にシンジがきょとんとした。
「だって、シンジはお父さんに、お父さんのままで居て欲しいんでしょう?」
念を押されたシンジが微かに動揺する。
シンジの躊躇いを感じながら、彼女はシンジを畳み込むようにまくし立てた。
「例えばね、欲しい物を買う時に、シンジは買いたい物を欲しいなって思いながらただ眺めているだけなの?違うわよね。自分の物にする為にあれこれ考えたり、お金を貯めたりするわよね?誰にも自分の欲しい物を伝えていないのに、誰かが自分の為に買ってきてくれるのをただ待ってるだなんてバカな真似はしないわよねぇ?だからね、大丈夫!最初から上手く行かなくても私がついてるから!失敗してもシンジは一人じゃないからね!一緒に頑張って叶えましょうね!!」
「う、うん…」
気圧された様子で頷いたシンジに、彼女は人の悪い笑みが零れるのが押さえられなくなった。
シンジはきちんと正しく選んだ。
シンジの言質もきちんと取った。
彼女の邪魔をする物はもうない。
「ふふふふふふ…」
「あの…」
「あ~っはっはっはっはっ!」
突如大声で笑い始めた彼女に、シンジがびくりと震えた。
獲物に照準を合わせるようにかっと目を見開いて、彼女はがばりと身を起こすと高らかに宣言した。
「覚悟しなさい、碇ゲンドウ!貴方とゼーレの鬼畜な野望もこれまでよ!精々自分の運命に怯え、恐怖すると良いわ!お~っほっほっほっほ!!!!」
嬉々として高笑いを響かせ始めた彼女に、シンジは表情を強ばらせ、身を固くして縮こまっていた。

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拍手返信

8/18 逃亡者さんへ

はわわわ、返事が遅くなってしまってすいません!
唸っていただけたとは恐縮です。
拙い文ではありますが、これからも重箱の隅をつつくように、シンジ達の気持ちを掘り下げていこうと思ってます。
拍手ありがとうございました。


08/19 tomatoさんへ

お久しぶりです!
お元気でしょうか。
お褒め頂ありがとうございます。
シンジのえらい(かわいいでも可)ところは、なんだかんだ言っても、お父さんが気になって仕方ないところだろうなと思います。
それはそれとして、遅くなりましたが、お知らせいただきましてありがとうございます。
知らなかったので、びっくりしました。
アドバイス道理、マイペースに活動していきますねー。
拍手ありがとうございました。


そのほか、拍手くださいました方も、遅まきながらお礼申し上げます。

tag : 拍手返信

第八話

口の中がからからに乾いて行く。
「僕は…」
思考を止めて握りしめた拳に、シンジはじっとりと汗をにじませていた。
どうすればよいのか、シンジには決める事など出来ない。
今まで考えてみた事もない事ばかりを聞かれ続け、シンジの心は限界にきていた。
それに、彼女の提案はとても怖い事だ。
あまり考えたくはない。
「今すぐ決められないのは分かるわ。でも、このままなら確実にお父さんは勝手に死ぬの、シンジを置いて。シンジにとって酷い事をするから、シンジに嫌われたく無くて、お父さんはシンジを遠ざけてた所もあるの。でもそれって、おかしいと思わない?悔しく無い?自分を見てもらおうと思わない?」
「でも…」
彼女が紡ぐ言葉に動揺しながら、シンジは自分の心が揺れるのを感じた。
自分を捨てた父に対する反感と親愛が交互に浮かび上がる。
けれど、反感故に彼女の言葉に共感し、親愛故に彼女の提案に恐怖を感じている事には、シンジは気付かなかった。
だから、ただただ瞳を揺らして沈黙し続ける。
「シンジはお父さんを見殺しにしたい?」
続けざまに放たれた彼女の言葉は、動揺し、凍り付いているシンジにとって、聞き捨てならない言葉だった。
「見殺しって!」
思わず声を荒げかけたシンジだったが、静かな笑みとともに続けられた彼女の言葉に再度声を失った。
「だって、このまま何も決めずにシンジがお父さんの行動をただ見守ってたら、お父さん本当に自殺しちゃうんだよ?それって、見殺しでしょう?」
「見殺し…父さんを、見殺し?僕が?父さんを?」
動揺しながらつぶやき続けるシンジに、彼女は優しく微笑んで囁き続ける。
「シンジがね、お父さんを許してあげるなら、このまま黙って死なせてあげるのもいいかもしれないわ。だって、お父さん、本当に自分から生きようとしてないんだもの。このままお父さんの自殺の為の駒になってあげるのも、ある意味親孝行かも知れないわ」
「そんな!そんな事って…」
あまりにも受け入れがたい言葉に動揺して、混乱するシンジに、彼女はさらに混乱させる言葉を放った。
「じゃあ、復讐する?」
「え?」
思いがけない言葉にシンジは止まった。
「シンジを捨てた事を後悔してもらって、死ぬのやめて、きちんとシンジのお父さんとして生きて行ってもらうようにする?」
彼女の言葉が放つ魅力に、思考が麻痺していたシンジはだんだんと捕われ始めていた。
「それは、復讐、何ですか?」
「だって、お父さんの意に添わないようにするんだもの。今までのお父さんのシンジに対する行動振り返れば、シンジのお父さんに対する復讐になると思うよ?楽しそうだと思わない?」
シンジの父親に対する負の感情を肯定され、まるでそれを煽るかの様な彼女の言葉に、シンジは恐怖を感じながらも魅かれて行く。
それに、父親が死んでしまう事になるのはなぜか嫌だった。
それを阻止して、自分の父親として、生きていたくないらしいゲンドウに、父親として生き続けてもらう。
それが楽しいかどうかはよく分からない。
しかし、失いたくはないとは思えた。
同じくらい、反感も感じていたけれど。
シンジの心は迷い、迷いが言葉になる。
「僕は…。父さんに…」
「シンジが、この第三新東京市に来たのは何故?」
シンジの迷いを見透かすような質問が飛ぶ。
「それは…」
勿論それは、父親に呼ばれたからだった。
シンジは、はっきりと、自分が父親を慕っている事に気がついた。
だがすぐにその感情は自分と父親との確執に紛れて、彼女の提案する復讐とやらに心が傾いて行く。
けれど、自分の父親に対して復讐をしたいとは思えなかった。
しかし、彼女が提案する復讐に乗らなければ、父親は死んでしまうという。
シンジは次第に自分が悪魔と対峙しているような気がし始めていた。
「僕は、父さんに、復讐したいとは思いません」
何か、得体の知れない物に誘惑されるような恐怖をふりきり、絞るように声を出した。
「じゃあ、このままで良いの?」
「それは!でも、どうせ、僕じゃ…。それに、父さんが本当に死のうとしているとは思えません」
「どうして?」
穏やかな声で彼女に問われたシンジは、自分の父親について思う事を述べ始めた。
「だって、父さんはネルフの指令だし…」
しかし、すぐに、言葉に詰まってしまう。
父親に対するイメージは確固としてシンジに圧力をかけてくるのに、それを表現する事はできなかった。
黙り込んでしまったシンジに、彼女が静かに問いかけた。
「シンジはお父さんが何を思っているか分かるほど、お父さんの事知ってるの?どんな時にどんな事を考えて、どんな行動を取るかとか」
その言葉に、シンジはかっとなって声を荒げた。
「知らないよ!、父さんの事なんか!」
シンジは自分の言葉にはっとする。
けれど、素直に気付いた事を認めたくは無かった。
顔をしかめて俯いたシンジに、彼女が穏やかに声をかけて行く。
「じゃあ、お父さんが死ぬつもりじゃないって、どうして言えるの?」
ぎゅ、と唇を噛み締めるシンジに、彼女は宣告した。
「シンジはお父さんに死んで欲しく無いのね?」
「そ、そんなの、知りません!」
思わず突っぱねたシンジに、彼女は小さく笑い、身体をゆすり始めた。
何だか、子供扱いされたような気がして、シンジは更に不愉快になった。
「じゃあ、シンジはお父さんを許して生かす方向で良い?」
「え…?」
先程までとは、全く逆の提案に、シンジは思わず声をあげた。
彼女は戸惑うシンジに構わず優しい声で続けた。
「だって、お父さんが死ぬのは嫌何でしょう?復讐するのも嫌なんだったら、後はお父さんの事を許して、死なせないようにするしかないじゃない?」
彼女の言葉の吸引力は、先程の比ではなかった。
けれど、父親に対する反感が、シンジにそれを認めさせなかった。
「でも…」
「でも?」
「僕は…」
「僕は?」
優しい声と、穏やかな微笑みで、オウム返しに問いかけてくる彼女に、シンジはやりにくさを感じながら言葉を紡いだ。
「父さんの事、許すとか、許さないとか…」
そう呟いた時に、シンジは唐突に気づいた。
つまり、それが、僕の答え?
父さんを許すとか、許さないとか考える前に、僕は『父さん』なんだって思ってるって事、だよね。
当たり前だけど。
でも、父さんは、僕を捨てた。
父さんは、僕が必要じゃない。
わかっていたことだけど、それでも僕は、僕は…。
「シンジは、お父さん、必要ない?」
シンジの迷いを見透かしたかのような彼女の言葉に、シンジの心臓は縮み上がった。
そのまま、真偽も分からない彼女の言葉の数々が頭を巡った。
父さんを、許して、死のうとするのを止めるのが復讐になる?
なら、父さんを許したく無ければ、僕は、この人の言う通り復讐すればいいの?
それは、父さんを許す事じゃないの?
僕は父さんを許したいの?
でも、確かに、死んで欲しくは、ないかもしれない…。
だけど…。
シンジの脳裏に、自分を捨てた父、手紙を送って来た父。
レイと笑い合う父。
自分を褒めてくれた父。
ネルフ総指令としての父の姿など、様々な父親の姿が浮かんだ。
答えはもう、出ている。
けれど、シンジはそれを口にしたくなかった。
俯き、黙りこんだシンジの病室に、不自然な程の沈黙が降りた。
とても、居心地が悪かった。

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拍手返信

6/27 tomatoさんへ

大変ご無沙汰しております~。こちらこそ返事が遅れましてすいません。
tomatoさんもお元気でいらっしゃる事と思います。
6/7、楽しんで頂けたようで、とても嬉しいです(笑)
ちょっと、リアルで忙しく、いろいろと放置気味になってますが、いろんな物をちまちま書きためながら楽しんでますよ~。
やっぱり笑顔が一番ですよね!( ̄∀ ̄)



7/26 逃亡者さんへ

あばばばばば、大変ご無沙汰しております。
忙しさにかまけて更新が滞りがちですが、ちまちま書き溜めておりますよー。
今月末あたりに一時帰宅が認められまして、置いて来てしまったUSBメモリを持ち出せないかと夢を膨らませています。
とりあえず、遅くなりましたが、お祝いありがとうございますー。

その他、拍手下さいました方々もありがとうございました。

tag : 拍手返信

拍手返信

6/8 逃亡者さんへ

拍手ありがとうございます。
アスカさんはへっぽこぶりが良く似合いますよね!(^^)┏▽"▽┓(^^
というか、私が書くとアスカさんがどうしてもへっぽこさんになるという…(--;)
おかしいなぁ?
それはさておき、楽しんで頂けたなら幸いですw


6/10 JIMさんへ

シンジくんの誕生日を忘れていたので、ケーキの数でごまかしてみました。
なんちゃって。
拍手ありがとうございました。


その他、空押ししてくださった方もありがとうございました!

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6/7 後編

寝れない。
真っ暗な部屋の中で、あたしは天井を睨みつけていた。
微かに光る時計の文字盤がうっすらと浮かび上がっている。
23:05。
あたしは溜め息を吐いて横になった。
ぎゅっと身を縮めてみる。
別にいいじゃない。
シンジの誕生日が昨日だったって。
あたしが気にする必要はないわよ。
あたしには関係ないわ。
かち、かち、かち、と時を刻む微かな音があたしを責める。
責められているように感じていた。
「あ゛~、もう!!」
あたしは耐えきれなくなって、身を起こした。
「そうよ!あたしが寝れないのはシンジのせいよ!!アイツが自分の誕生日なんかを隠しておくから!文句言ってやらなきゃ気が収まらないわよ!」
あたしはネルフに向かう決意をした。
今ならまだ、リニアの終電まで時間がある。
中学生が歩く時間帯じゃないのは分かってるけど、仕方ないじゃない!
シンジに文句言う為にはネルフに行かなきゃ行けないんだもの!
あたしを苛立たせるシンジが悪いのよ。
あたしはパジャマがわりのTシャツから、外出する為に着替えた。
何があるかわからないから、動きやすくて、露出の少ない服装を心掛けた。
ポシェットにお財布を詰めて、あたしは足音を忍ばせてミサトのマンションを抜け出した。
あたしの行動は監視されてるだろうから、ミサトに連絡が行って連れ戻される前にネルフにつかなきゃ!
あたしは夜の第三新東京市をリニアの駅に向かって走りだした。
ふと、コンビニの光に目を奪われる。
そういえば、コンビニにもケーキ、あるわよね。
そのままあたしの足は固まった。
何考えてるのよ、あたし!
あたしがネルフに行くのはシンジに文句言う為よ。
アイツの誕生日を祝う為なんかじゃないんだから!
でも…。
あたしの足は何故かコンビニの中に向かってしまっていた。
やる気のない店員の視線が纏わりつくのを感じながら、スイーツが並ぶ棚で足をとめる。
時間が時間だから、ミルクレープが一つしかなかった。
それを買わなきゃならないのはすごく不満だったけど、仕方がないからそれを買った。
じろじろと会計中に眺められたのは気に障った。
不愉快になりながら、更に駅を目指す。
しばらく歩くと、道の反対車線側に、ロー〇ンを見つけた。
少しだけ躊躇したけれど、気付けばあたしはロー〇ンのスイーツコーナーに立っていた。
「別にシンジにあげる訳じゃないわよ。あたしが買いたいだけなんだから!」
さっきのコンビニよりも種類が豊富で、苺のモンブランとチョコレートケーキが残っていた。
ロー〇ンを後にして、駅を目指す。
7&〇を見つけた。
ついついあたしの足が止まる。
店員が女の人で少し意外に思った。
ティラミスとシュークリームとロールケーキが残っていた。
「別に意味はないけど、買いたいんだから仕方ないじゃない!」
あたしは腹を立てながら駅を目指した。
ファミ〇を見つけた。
「何でこんなにコンビニがあるのよ!!」
怒りながら確認すると、プリンアラモードと苺のショートケーキと、ラズベリーのパンナコッタがあった。
更にリニアの駅にに向かって歩を進める。
〇Kがあった。
「仕方ないじゃない!コンビニがここにあるんだから!」
チーズケーキとチョコレートムースがあった。
リニアの駅のそばに、f〇fがある事に気がついた。
「コンビニにケーキがあるのが悪いのよ!そうに決まってるわ!」
苺のタルトと、チョコバナナクレープがあった。
買い物を終えて漸く駅に到着し、あたしはリニアの時刻表を確認した。
リニアの最終は下りが1時58分。
上りが0時59分。
今の時間は23時40分。
あたしが乗るべきリニアの発車予定時刻は23時43分。
それを逃すと、最終しかない。
一時間近くも待たなくちゃならなくなるだなんて冗談じゃないわよ!
あたしは慌てて定期代わりのネルフカードをスキャンさせて、ホームで発車ベルを鳴らし始めたリニアに飛び乗った。
あたしがリニアに乗ると同時にリニアの扉が閉まる。
間に合った安堵感で満たされたあたしが息を吐くと、リニアは静かに動き出し始めた。
あたしの胸に、恐怖とも後悔ともつかない気持ちが込み上げる。
両手に持ったコンビニの袋がやけに重たく感じられた。
あたし、本当に何してるんだろう。
深い溜め息を一つ吐いて、あたしはリニアのソファに腰掛けた。
外は暗闇で、リニアの室内灯だけがくっきりとしていて、行き先は分かっているはずなのに、あたしの知らないどこかに連れて行かれているような気持ちが少しした。
そんな非現実感を味わっていると、今のあたしの行動の非現実さもひしひしと自覚させられた。
だけども。
らしくなくて、身の置き所がなくて、引き返してしまいたくもあるけれど、あたしを載せたリニアはもう、動き出してしまっている。
どこか諦念めいた開き直りと、達成感があたしの躊躇いを蹴散らして行ってくれた。
それに、あたしはあくまでシンジのせいで眠れなくなった文句を言いに行くだけだもの。
深く考える必要なんかないのよ!
あたしが自分の考えの正しさに納得した時、リニアがネルフのある駅に到着した。
「行くわよ、アスカ!」
気合いを入れてあたしはリニアからホームへと降り立った。
回送になるため、長く停車しているリニアを眺めて、あたしは駅のホームを通り抜けようとして、ホームのベンチに座っていた、ここには居ないはずの人間とばったりと鉢合わせになった。
あたしの身体が硬直する。
そいつの動きも目を丸くして固まった。
何でこんな所にいるのよ!?
ネルフでテストしてる筈じゃないの!?
どうして今なのよ!
あたしが驚愕と混乱から立ち直るよりも早く立ち直った奴が、生意気にも先手を取った。
「アスカ???」
怪訝そうな声音に、あたしは舌打ちしたくなる。
ばつが悪くて返事が出来なかった。
「何、してるの?」
不審そうな眼差しが、こんな時間に、こんな所にあたしがいる事を疑問に思っていると語っている。
忌々しくて顔が歪んだ。
どろどろとあたしの中で言葉と感情が渦巻いて、結局形にならずにあたしは沈黙した。
何をどう言えってのよ!?
あたしがここに来た理由を説明できる訳もないし、する必要すらない事にあたしは気がついた。
コイツが何をどう思おうと、別にあたしの知った事じゃないのよ。
あたしはもやもやして気持ち悪くて眠れなかったからここに居るだけ。
それで良いじゃない。
納得すると落ち着いて、あたしにはいつもの余裕が出てきた。
答える代わりに、両手に持っていたコンビニの袋を全部シンジに突き出した。
「持ちなさいよ」
「え…?」
突然あたしに目の前に突き出されたコンビニの袋の数々に、シンジは目を白黒させて戸惑うばかりで、手を伸ばして受け取ろうとしなかった。
あたしの言い方や行動がまずいのは分かっていたけれど、シンジのそんな態度が妙に癪に障った。
シンジの察しが悪いのなんて、いつもの事なのに。
「いいから!あんたが持って!!」
一歩シンジの前に踏み込んで、更にコンビニの袋を突き付けた。
「う、うん」
あたしの態度に押されたように、シンジは漸くあたしからケーキの入った袋を受け取った。
その瞬間、あたしは張り詰めていた物から解放される開放感を味わっていた。
重い肩の荷が下りてすっきりした。
あたしの用は済んだので、あたしもシンジと同じベンチに腰掛けてリニアを待った。
ちらちらとシンジがあたしを窺う。
言いたい事は分かるけど、あたしは教えてやりたくない気分だった。
だから、あたしが逆にシンジに聞いてやった。
「あんた、何でここに居るのよ」
「何でって。計測器に不具合が出て、今日のテストは中止になったんだよ。だから、帰っていいってさっき言われたから…」
「ふうん」
それでコイツはネルフじゃなくてこんな所に居た訳ね。
理由が分かればどうという事もなかったわ。
あたしの疑問は解消されてすっきりしたけれど、シンジのそわそわした動きがどんどん増していた。
「あのさ」
堪えきれずにシンジが声をかけてきた。
あたしの顔を見ようとしたり、見ないようにしたり、持たされたコンビニの袋に目を落としたりと忙しい。
妙に落ち着いた気分であたしはそんなシンジを横目で確認していた。
「アスカこそ、何でこんな所に居るの?こんな時間に」
シンジのもっともな疑問に、あたしは少し意地悪をしたくなった。
ひねくれた答えをシンジにぶつける。
あたしに昨日言わなかった罰よ。
「別に?あたしがどこで何をしようとあたしの勝手じゃない」
「そうだけどさ…」
それきり、あたしとシンジの会話は終わる。
今日は話をせずにゆったりと流れる時間を楽しみたい気分だった。
「ねえ…」
でも、シンジは疑問に頭を悩ませているらしい。
「これ、何?」
コンビニの袋の中身をシンジがあたしに問う。
でも、そんなの見れば分かるし、わざわざ答えてあげる必要はないわ。
「さあ」
あたしは適当にシンジをはぐらかした。
「さあって…」
ミサトの家に帰る為に待っていたリニアが、駅のホームに到着する。
きっと、帰ったら怒られるでしょうね。
こんな時間に家を抜け出したんだもの。
でも、すっきりしているこの気持ちは結構悪くない。
あたしはリニアに乗る為にベンチから腰を上げた。
真っ直ぐリニアを目指しているうちに思いついて振り返る。
シンジのびっくりした顔が目の前にあった。
「気になるなら自分で確認してみたら?正解が分かったら教えてあげる」
思い付くままに口にだしてるから、正解なんて無いんだけどね。
あたしはシンジの困惑した顔に気を良くしながら、ご機嫌でリニアに乗り込んだ。
今度はきっと、良く眠れると思うわ。
あたしはもう一度シンジを振り返った。
シンジはリニアに乗り込みながら、あたしの言った通り、コンビニの袋の中身を確認してたみたい。
あたしの視線に気付いて慌ててる。
思わずその姿に笑ってしまう。
「シンジ」
「な、何?」
微妙に声も裏返ってるのは何故かしらね?
「Alles Gute zum Geburtstag!」

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6/7 前編

シンジがエヴァとの定期テストで丸1日留守をしていた6月X日。
「そういえばさぁ…」
出し抜けに、あたしがシンジのアドバイス通りに買ってきた市販のたこわさをつまみながら、あたしとシンジの保護者のミサトがのたまった。
「もうすぐシンちゃんの誕生日なのよねぇ~」
「ふぅ~ん」
……………。
「はあああああ!?」
あたしは思わず素っ頓狂な声を上げて、うつ伏せになり両手に顎を乗せながら見ていたテレビからミサトを振り返っていた。
「なっ、何よう」
ミサトは目を白黒させながら、箸をくわえてあたしを見ている。
その姿を眺めながら、あたしがドイツや日本で知り得た、サードチルドレンのプロフィールが矢のように走り巡った。
名称。
サードチルドレン、碇シンジ。
保護者。
実父である碇司令改め、酔いどれミサト+加持さんの元カノ+ネルフでのあたしとシンジの上司。
生年月日。
生意気にもあたしより半年早い6月6日。
年齢。
したがってあたしより早くも15。
性別男。
性格。
根暗で卑屈で根性無し。
たまに、このあたしにすら負けたと思わせるなような、無謀な戦略を是とするラッキーパイロット。
ラッキー…よね?
アイツの態度が卑屈だから、イマイチ本当の実力が掴みにくい。
少しくらい堂々としてなさいってのよ、あのバカ。
いらっとしながら覚えている情報を検索する。
一部の科学者達の間で高名な碇ユイ博士の息子。
幼い頃に博士と死別。
父親の司令とも離れて暮らしてたっぽい。
だから、ちょっぴりあたしと似てるかもしれないかも…なんて、絶対に有り得ない事をこのあたしに一瞬でも思わせたムカつく奴。
追記。
シンジの作ったお弁当は美味しい。
でもそれは関係なくって。
ミサトは今何て言ったんだっけ?
誕生日?
シンジの?
シンジの誕生日は6月6日。
6月6日って、昨日じゃない!!!!
だからあのバカ昨日はいつもに輪を掛けて挙動不審だったのね!
ていうか、どうして気付かなかったのよあたしのバカ!
でも別にあたしのせいじゃないわ。
そもそも何であたしがシンジなんかを気にかけてやったりしなくちゃならないのよ。
それに!!
どうして昨日あたしと買い物行った時にあのバカは誕生日だって言い出さなかったのよバカシンジのバカバカバカバカ!!!!
シンジの事だから『どうせ僕なんか…』とか後ろ向きな事ばっか考えたに違いないわ、あのあほバカシンジ!!
人を見くびるのもいい加減にしてよね!
どうやって思い知らせてやろうかしら。
瞬時に様々な気持ちが渦巻いたあたしは思案にくれた。
「もしも~し」
だけど、どうしたら良いんだろう。
もう、シンジの誕生日は過ぎちゃってるし、今日ももうすぐ終わるし、シンジは今日帰ってこないし。
ヒカリに相談してみる?
ううん、そんな事出来ない。
もうすぐ22時だし。
きっとヒカリはもう寝てるわ。
朝、5時には起きるって言ってたもの。
シンジの奴と同じなのよね。
でもそれくらい早く起きないと間に合わないってヒカリは言ってたわ。
「もしもしアスカ~?」
だけど、それを差し置いてもこんな事相談できるわけないじゃない!
シンジの誕生日についてあたしが悩んでるなんて誰かに知れたら大変だもの!
「ちょっと!どうしちゃったのよアスカ。聞いてる!?」
「きゃあああああ!」
突然目の前いっぱいにミサトの顔が現れて、あたしは思わず叫び声をあげてしまった。
「きゃあああああ!って失礼よあんた!」
あたしの悲鳴に驚いたミサトも悲鳴をあげて、我に返ってあたしの頭を叩いた。
何てことするのよ!!
「何すんのよミサト!」
あたしは抗議の視線をミサトに向けた。
だけど、睨み付けるあたしに頓着せず、ミサトこそがあたしに抗議した。
「何すんのはこっちのセリフよ!大声あげて振り向いたっきり黙りこくって。呼んでも返事しないし。心配するじゃないの。一体どうしちゃったの、アスカ」
そう言うミサトの顔は言葉とは裏腹に面白がるようににやけていた。
頭を叩かれた反感が、面白がるミサトの顔に更に膨れ上がった。
この〇〇〇が!
いけない。
思わずスラングが出て来ちゃった。
口に出なかっただけ上出来よね。
「別に!何でもないわよ!!」
面白がってるミサトなんかに、これ以上あたしの情報を与えて楽しませるもんか!
あたしはミサトに苛立ちながら、ミサトから視線を外してTVを眺めた。
「ふ~ん?そう?ま、いいわ。そういう事にしておいてあげる。さ~て、と!今日はもう寝ようかしらね~」
ミサトが後ろで立ち上がる気配がした。
モヤモヤと面白くない気持ちがあたしを振り向かせない。
不意に、ミサトの手があたしの頭にふわりと乗せられた。
思わずあたしは頭を振ってミサトの手を振り払う。
ミサトが苦笑する気配がリビングに満ちる。
今のあたしには、ミサトの気配がすごく鬱陶しい。
何かまた、ミサトに気に障るような事をされたり言われたりしたら、きっとあたしは癇癪を起こしてしまう。
その瞬間を待ち望むような、忌避するような、すごく曖昧な気持ちであたしはTVから視線を逸らす事が出来なかった。
あたしの身体は全身でミサトという存在の動向に警戒していた。
でも、あたしが恐れていた瞬間は来なかった。
「今日ももう遅いから、夜更かししないでアスカも早く寝るのよ?明日もあるんだから。じゃあお休み~」
シャワーを浴びて、ビールをもう一缶開ける音がして、最後にミサトはそうあたしに言って自分の部屋に入ってしまった。
とん、と、ミサトの部屋の襖が閉まる音がやけにあたしの耳につく。
何がそんなに面白くないのかあたしにもわからなかったけど、あたしは確かに苛立っていた。
今日があったんだから、明日があるのは当たり前だけど。
だけど。
でも、何か今日しなくちゃならない事をしていないような、これからしなくちゃいけないような、酷く落ち着かない気持ちが独りになったあたしを襲い始めていた。
横目で時計を確認する。
長針は2と3の間を指している。
TVを見続ける気がなくなって、あたしはTVを消して歯を磨き始めた。
まだ寝たい気分じゃないけど、寝ないでいるのも癪な気がする。
機械的に歯ブラシを上下させながら、あたしはいつの間にか考えていた。
シンジの誕生日、昨日だったんだ。
どうしよう。
浮かんだ考えに動揺して、あたしは歯ブラシを噛みしめてしまった。
ガリ、というプラスチックの硬い感触に慌てる。
誰にも見られていない筈だけど、すごく恥ずかしかった。
ミサト、ちゃんと寝てるわよね?
心配になって首を伸ばして洗面所からミサトの部屋を伺って見たけれど、ミサトの部屋の襖は開いた気配がなかった。
ほっと胸をなで下ろしながら、あたしは口を濯ぎ始める。
不意に、さっき浮かんでしまった考えに対する疑問が湧いた。
何であたし、アイツの誕生日が昨日だった事こんなに気にしてるの?
疑問の持つ衝撃の大きさに、あたしは口に含んで吐き出す筈だった水を、ゴクリと嚥下していた。
の、飲んじゃった!
あたしらしくない事ばかり繰り返してしまって、苛々が溜まっていく。
何であたしがこんな気持ちにならなくちゃいけないのよ!
シンジに悪い事をしたような気持ちとか、あたしに教えてくれなかった不満とか、シンジなんかを気にするなんて気に入らないとか、色んな気持ちが入り混じって落ち着かない。
もう一度口に含んでいた水を吐き出して、あたしはタオルに顔を埋めた。
ふんわりした感触があたしの心を宥めていく。
もう寝よう。
そう心に決めてあたしは自分の部屋に向かって行った。

tag : LAS

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04/27 JIMさんへ

そうですか。
じゅーぶんでしたか。
まだまだ甘さが足りなくてばかっぷるとは言えねなあ^W^と思っていたのですが…
参考になりましたw
拍手ありがとうございましたm(__)m



逃亡者さんへ

実はこの話、以前お話した韓国人カップルの、二種類の某事情をオチに持って来ようと思っていたのです。
口からガムシロップ垂れ流すほど甘い話を書いてみようと思ったんです。
しかしながら、この時点でのシンジ君にはそれは無理だと判断しました。
それなので、いまいち私的に中途半端な感じですが、面白がっていただければ幸いです(笑)
拍手ありがとうございました。

tag : 拍手返信

あとがき

えーっと、突発的に甘い話を書きたくなりました。
もっとバカップル風に甘々にする予定でしたが、シンジ君のガードが堅く、そこまで甘くなりませんでした。
もしも機会があれば、リベンジしてみようと思いますw

tag : つぶやき

Sweet Lovers 後編

昼休みが終わり、僕達が教室に戻ると、それを見つけたアスカが飛んできた。
「シンジ!あんた何やってんのよ!遅いじゃないの!!」
そんな事を言われても僕は困る。
だって、別に何か約束していた訳でもないのに。
でも、僕は周囲の視線が集まるのを感じながら、冷や汗を浮かべながらアスカを宥めた。
ここ最近、アスカがこんな態度をとるから、ますます僕達には視線が集まるようになった。
凄く恥ずかしい。
「ご、ごめん…」
「謝れば済むと思ってんの!?」
「そういう訳じゃないけど…」
ものすごく怒ってるのに、がっちりと僕の学生服のシャツの裾を握り締めているのは何で?。
良く見なくても、またアスカの目が潤みだしているのが良く分かる。
だから!
そんな目で僕を見ないでってば!
「その、遅くなってごめん…」
「何であんたが謝るのよ!何であんた遅かったのよ!」
えっと、こういう時は、僕はどっちに答えればいいの!!
もう!
覚悟はしていても、僕が感じる教室中からのプレッシャーは変わらない。
僕は少し投げやりな気持ちになった。
「そんなに怒らないでよ!」
思わず出てしまった言葉にはっとなったけど、事態は僕の望まない方向へと進んでしまっていた。「何よそれ!あんた、やっぱり自分が悪いなんて思ってないんじゃない!何で謝ってんのよ!どういうつもりよ!?」
ますますヒートアップしたアスカが僕に更に詰め寄ってきた。
僕とアスカは背が同じくらいだから、顔を寄せられるとちょっと困る。
いろんな事を思い出しちゃうし。
そんな事を頭の片隅で考えながらオロオロしていると、トウジがアスカに絡み始めてくれた。
「何や、惣流。いつからダンナがおらんとあかんよーになったんや」
後がもっと大変になるけど、今はとても助かった。
ありがとう、トウジ!
と思ったのも束の間だった。
「ふん!お嫁さんにいつもいつもあれこれ世話してもらって、だらしなく鼻の下伸ばしてるジャージ馬鹿程じゃないわ!関係ない奴は引っ込んでて!!」
「な、な、な、誰がいつ鼻の下伸ばしてるいうねん!」
「あたし一言もあんたの事なんか言ってないわ?あんた、お嫁さんがいて、いつもいつも世話してもらってて、ついでにジャージで馬鹿で鼻の下も伸ばしてるって認める訳ね!そういえばあんた、最近、いつもヒカリからお弁当差し入れられてたっけ。一体どういう関係なのかしらね?自称硬派さん」
「なぁ!?くっ、こん女…」
間発入れずに、ついでに僕から視線も逸らさずにあっさりトウジを撃退すると、アスカはまた僕を追及し始めた。
「で?シンジ。どういうつもり?」
「な、何が?」
「あんたばかぁ!?遅れて来た事についてに決まってんでしょ!?」
憤慨しているアスカに愛想笑いを返しながら僕は思った。
それって、決まってたの…?
「ごめん…」
「だからっ!一々謝ってないで説明してよ!何で遅かったのよ!」
「えっと、それは…」
「それは?」
オウム返しに続けてくるアスカに、僕はしどろもどろになる。
どうしたら、アスカの気を収める事が出来るのだろう?
そう思いながら、真剣に僕を見つめてくるアスカの青い瞳から、僕は目が離せなくなっていた。
全身が燃えるように熱くなって行く 。
段々と、アスカが腹を立てている事がどうでも良くなってきた。
周りの皆は気になるけども、僕はアスカに勝てないんだし、しょうがないよね。
さっき、これで良いんだって、気がついたんだし。
僕はアスカの肩に手を置いた。
「何よ、この手」
アスカは虚を突かれたように目を丸くした。
そのまま僕は、アスカの唇に口付けた。
周囲にどよめきが起きる。
恥ずかしいけど、でも、どこかすっきりしながら僕はアスカの顔色を窺った。
思わずしちゃったけど、アスカは怒らないよね?
しろって、言ってたのはアスカの方だったんだし…。
アスカは真っ赤になったまま、自分の両手で唇を押さえている。
「えっと、ごめん。その…」
何も考えずに謝ってしまった後で、どう言葉を繋げれば良いかで迷って詰まってしまった。
嫌だった?
これは、当たり前だとアスカに怒られそう。
我慢できなくて。
これはなんだか僕に節操が無いみたいで嫌だ。
どうしよう…。
僕が恥ずかしさも手伝って、アスカの肩越しに校舎の床のキズを眺めているとアスカの声が聞こえてきた。
「しんじぃ…」
最近、家で良くアスカが呼びかけてくるようになった、とっても心臓に良くない僕への呼びかけに、僕は慌ててアスカを見た。
そこには頬を染めて瞳を潤ませているアスカがいた。
「ええっと…」
僕は更にどうしたら良いか分からなくなっていた。
アスカがこんな風になってしまって凄く焦っているし、自分がしてしまった事に対する恥ずかしさがまた込み上げて来ていたし。
だけども、僕のそんな葛藤なんかアスカには関係なかった。
「あたし、うれしぃ…」
アスカが瞳を潤ませたまま、夢見るように呟いた。
ああああ!!
こういうアスカは僕だけしか見たことなかったのに!!!!
僕は失敗したという気持ちでいっぱいになっていた。
ケンスケが言ったように、僕らの関係が変わったのは二週間前。
僕は父さんと母さんの墓参りに行ってきて、アスカは誰かとデートに行ってきた日。
墓参りが終わって、何となくチェロを弾いていた僕に、デート相手を置いてきぼりにして帰ってきたアスカが拍手をくれたのが始まり。
その日は1日アスカがアスカらしくなかった。
そして、誘ってきたのはやっぱりアスカだった。
でも、逆らったのは僕だ。
挑発されて、その気になって、今みたいに僕からアスカにキスをした。
びっくりするくらい、気持ち良かった。
アスカもすごくびっくりしてた。
僕も自分にびっくりしていた。
自分に対する自己認識が少し変わった。
離れようとするアスカを、僕は何故か引き留めてた。
焦った顔のアスカをかわいいと思った。
それから、僕達は、友達の結婚式にお呼ばれされたミサトさんが加持さんに送られてくるまで、ずっとキスしてた。
何でそうなっちゃったのかは、僕にも良く分からない。
でも、何だかその時はそうするのが自然な感じだったんだよ!
どうしてか分からないけど、絶対に怒ると思ってたアスカは怒らなかった。
真っ赤な顔で、潤ませた瞳で、僕をただ黙って見つめて来てただけ。
お互いに恥ずかしさが支配してて、ろくに目は合わせられなかったけど、何だか離れたくなくてずっと一緒にいた。
そして目が合うと僕らはどちらからともなくキスしてた。
アスカは落ち着かないみたいでソワソワしてた。
僕もすごく落ち着かなかった。
あの時、一度も目が合わなかったら、僕達は気まずくなって、自分の部屋に籠もっちゃってたんじゃないかな?
でもその日はすごくアスカを意識しちゃって、側にいて欲しくて、アスカが身動きすると思わずアスカを見てしまってたんだ。
そうすると、アスカが僕の視線に気付いて、動きを止めて、泣きそうな顔で僕を見てて。
そんなアスカが凄く可愛く見えて。
痛いくらい胸がドキドキして、もう一度キスしたくなって、ゆっくり近付いていってもアスカは逃げなくて、僕はすごくすごく嬉しかった。
結局その日はミサトさんたちが帰って来て、アスカとのキスは終わりだった。
加持さんにアスカが甘えるのも一緒だった。
でも、加持さんの腕にぶら下がりながら、アスカがは僕の事を見てて、僕らはこっそり視線を合わせてた。
何だか嬉しくて、興奮して眠れなくて、でも、アスカが何を考えているのか分からなくて不安だった。
翌朝の月曜日。
ちょっとアスカと顔を合わせるのが怖かった僕が襖を開けると、同じように不安そうにしながら起きてきたアスカと顔が合った。
昨日のキスを思い出して、僕達は固まった。
そして、気がついたらまたキスをしてた。
それからの僕らは、ミサトさんが起きてくるまで、目が合えば自然にキスするようになってた。
学校では、ずっとアスカの視線が僕にあるのに気付いていた。
僕はアスカと目が合うとキスしたくなってたけど、学校だったから我慢した。
火曜日は、ネルフでもキスをした。
綾波に見られた。
水曜日は学校でも人目を避けてキスをした。
その時は誰にも見られなかった。
木曜日は家でアスカにキスを強請られた。
ミサトさんがビールを吹きこぼした。
金曜日には僕からアスカにキスをした。
ペンペンが僕達を見上げてた。
土曜日には、学校やネルフでも、しょっちゅうキスを強請ったり、甘えてきたりするアスカにどう対応したらいいのか分からなくなって、トウジ達に相談してた。
日曜日には、トウジ達にからかわれたアスカに、散々僕達の関係について追及されて、僕は僕達の関係について気がついた。
そして、僕はアスカに一日中甘えられるっていう練習をさせられた。
明けて今週の月曜日。
僕が、アスカに、学校の皆の前でキスを強請られて、僕が応えて騒ぎになって。
それから毎日学校でも常にキスを強請られ続けて。
どうしたらいいか分からなくなって。
ミサトさん達にも相談したけど、解決しなくて。
そして、今。
僕は初めて自分から学校でアスカにキスをした。
ずっとアスカにその事を責められてたから、達成感が僕にはある。
でも、やっぱりこれはちょっと恥ずかしいし、何だか嫌だな。
だって、頬を染めて目を潤ませたアスカを、ケンスケがカメラで撮ってるし。
後で、その事、アスカに言ってみようかな?
僕の言う事、聞いてくれるかな。
きちんと話せば、アスカって、納得してくれる所もあるんだよね。
無理難題もふっかけてくるけど。
ちょっとアスカを見直してる所なんだ。
「えっと…」
頬を染めて大人しくなってるアスカが僕の前にいて、皆の視線が僕達に集まっていて、凄く恥ずかしくて逃げたいのに、アスカの側から離れたくもない。
どうしたら良いか分からなくなって、僕は赤い顔で視線をさ迷わせながら立ち尽くしていた。
あんまり僕が視線を逸らし続けていると、アスカは機嫌が悪くなるから、アスカの様子は確認しておかなきゃならなかったけど。
そんな風に僕とアスカが視線を合わせずに黙り込んでいると、押し殺した声でトウジが叫んできた。
「えーい、この、いい加減にせんかい!こん色ボケ共がぁ~!!!!」
えぇ!?
失礼な!
僕達は色ボケなんかじゃないよ!
僕達は、僕達は。
恋人同士になっただけだよね?
ね、アスカ。

tag : LAS

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4/25 逃亡者さんへ

春らしく、ほんのり甘いお話が書きたいな、と思って書きました。
楽しんでいただけましたのなら、嬉しいですw
本当に、いろいろと面白くない情報ばかりが耳に入ってきておりますが、なるようにしかならないと諦めて、前向きに行動するしかありませんね。
励ましのお言葉ありがとうございました。
とても勇気が湧きました。
頑張りますーp(*^^*)q
拍手ありがとうございました。



その他、拍手くださいました方、ありがとうございました。

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Sweet Lovers 前編

僕は最近、アスカを持て余している。
元々アスカの我が儘に振り回されて、持て余し気味だったのに、拍車がかかってしまった。
おかげでとても困っている。
なのに、誰も僕の相談に乗ってくれない。
ケンスケとトウジは、僕の相談は二度と聞かないと宣言をしたし、青葉さんと日向さんには、僕が一人で解決すべき事だと諭された。
ミサトさんにはからかわれて終わりだったし、リコさんには微笑まれて終わりだった。
父さんは論外だし、頼りになりそうな加持さんにはなかなか会えない。
いったいどうしたらいいんだろう。



「ちょっと、シンジ!聞いてるの!?早くしてよ!」
あぁ。
またアスカの早くしてコールが始まった。
いったい今日何度目だと思ってるんだろう。
いい加減にして欲しい。
折れそうになる心を振り絞り、僕はアスカに抵抗した。
「でも、アスカ…」
「でもはいらない!嫌なの!?違うの!?どっち!?」
だけど僕のなけなしの勇気を振り絞った抗議は、激情で顔を赤くしたアスカの震える声で志半ばで砕け散った。
嗚呼。
何でそんな目で僕を見るんだよ。
勝てるわけ無いじゃないか!
僕はひしひしと敗北感を感じながらアスカに承諾の返事をした。
「分かったよ…」
でも、既にへそを曲げていたアスカには、それだけでは通用しなかった。
「何よ、その嫌そうな態度は!そんなに、いやなわけぇ!?」
アスカの声が、本格的に震え始める。
ああああ!
お願い!
待って!
「ち、違うよ!」
「じゃあ、なによ!!」
真っ赤に染まったアスカが睨んでいる。
ええい、ままよ!
僕は手遅れになる前に行動に移した。
ちくちくと刺さる視線が痛い。
だけど、でも、そうさ!
僕だって男なんだ!
こういうシチュエーションに何も感じない訳じゃないよ!
でも、僕は日本人なんだ!
外国で育ったアスカと同じものを僕に求めないでよ!
「シンジ」
恥ずかしく必死に俯いて皆から視線を逸らす僕に、アスカの声が届いた。
うん。
分かったよ。
機嫌は直ったんだね。
って、ええ!?
「ア、アスカ!?」
僕は驚いて頬を押さえてアスカを見た。
「何よ!何か文句でもあるわけ!?別に良いでしょ!あんたからまたしてって訳でもないし、頬っぺたなんだし!う、嬉しかったからのお礼って訳じゃないんだからね!!勘違いしないでよ!?」
ほんのり桃色に染まったアスカは、そう早口で捲くし立てると、脱兎のごとく僕達の前から逃げ去った。
後には屋上で頬を押さえて立ち尽くす僕と、じとっとした目で僕を見ているトウジとケンスケが残された。
「トウジ。ケンスケ。お願い、何も言わないで」
僕だって馬鹿じゃない。
でも、これは、僕がアスカに勝てる訳はないって事の証明なんだ。
きっとそういう事なんだ。
仕方ないんだよ!
だから、お願い。
僕をそっとしておいて。
だけど、僕のそんなささやかな望みは叶わなかった。
「か~、センセも恥ずかしげもなく、よーやるわ~」
そんな訳ないじゃないか、トウジ。
「そうだよなぁ。惣流に迫られる気持ちも分からなくもないけど、ちょっと、なぁ?」
分かってくれるなら、どうしたらいいのか教えてよ、ケンスケ。
だけど、僕は黙って二人の話を聞き続ける事しか許されていない。
それくらいは僕にだって良くわかる。
「ほんまや。人様の前やっちゅーのに、朝から晩までぶちゅぶちゅぶちゅぶちゅぶちかましてくれよってからに」
「そうだよな。どうせ、家に帰れば碇は…。はっ!まさか、シンジ!お前惣流と行くところまで行っちまったんじゃ!?」
「なんやてぇ!?この裏切り者~!」
「ミサトさんが帰ってくるまで惣流と酒池肉林…。くう~、うらやましぃ~」
って、ちょっと待って!
「な、何言い出すんだよケンスケ!そんな事はまだしてないよ!!」
僕は必死に弁解を始めた。
このまま否定せずに黙っていても良いことは何も無いのは分かっているし、黙ってなんていられなかった。
否定しないでいれば、二人はどんどん事実をねじ曲げて行くから。
それがアスカの耳に入れば、大変な事になって苦労するのは僕のほうなんだし。
それが嬉しくない訳じゃないけど、やっぱり、物事には順番ってやつがあると思うんだよね!
ほら、アスカが日本に来て、僕達が顔を合わせてからまだ数ヶ月くらいしか経ってないし…。
焦った僕の弁解を聞いて、ケンスケの目が鋭く光った。
「『まだ』してないという事は、それ以外の事はしてるって事だな!?さぁ、吐けシンジ!惣流とどこまで進んだ!?」
眼鏡を押し上げ、ケンスケが僕に詰め寄る。
それを横目に眺めつつ、トウジがしみじみと唸り始めた。
「大人しい顔してセンセもやるもんやなぁ!」
「碇も男だったって事さ。考えてもみろ!今のシンジの環境は、男の夢の集大成じゃないか!!」
「そーいうもんか?」
「そういうものだよ!巨大ロボットのパイロットに、美人のお姉さんとの同居!それに、同級生の女の子とも同居も始めて、その子とは俺達の目の前でラブシーン繰り広げるような仲だしさぁ。どう考えてもフラグ立て過ぎだろう!」
だけど、エヴァのパイロットは危険がいっぱいだし、美人のお姉さんはぐうたらだし、同級生の女の子はアスカなんだよ…?
僕が良い思いだけしてるとでも言うの!?
そんな訳無いじゃないか!
ミサトさんは家事ちっとも手伝ってくれないで僕に押し付けてばかりいて、だらしない格好して、ビールばかり飲んでいるし、アスカは、アスカは…。
相変わらず我が儘だけど、最近、ちょっとだけ変わってきた、かな?
僕の、気のせい…かな?
日本に来た時からの、我が儘で傍若無人ないつものアスカと変わりないような気がするけど、でも、なんか…。
僕がほんの少し思考の海をさ迷っているうちに、トウジが心底不思議そうに話しかけてきた。
「ほんまの所、センセはあの女のどこがええねん。いつの間にそういう関係になっとったんや。綾波が好きやったんと違うんかいな?」
「碇と惣流の関係が変わったのは俺の見た所、惣流が洞木にデートを頼まれてたっていう、先々週の日曜からだな!週明けからは、もう、惣流の様子が変だった!で?本当の所はどうだったんだ?一体何があったんだ?シンジ!」
ぼんやりとしていた僕に、突然矢継ぎ早に矛先が回ってきた。
最近の僕の、一番苦手としている質問だ。
「え!?な、何が?」
「隠すなよ!お前と俺達の仲だろ~?」
えっと、これは詳しく話せって事?
でも、アスカからは話すなって言われてるし、どうしよう…。
「せやな。わいも気になるわ。話してみい」
えっと、トウジまでなんでそんなに鼻息荒いの。
別に良いじゃないか、僕の事なんて。
僕の相談には乗ってくれないくせに。
戸惑ったまま、苦笑いを続ける僕に、ケンスケが察したように頷き始めた。
「そうか。シンジ!お前、惣流に口止めされてるな!?」
ぎく。
何で、分かったんだろう。
「か~!情けない奴ちゃなぁ!女の尻に敷かれてそれでも男かい!男なら男らしく、すっぱり腹割って全部話さんかい!」
トウジ。
僕、今、僕とアスカの間に何があったか話す事は、別に男らしいとか、そうじゃないとか、関係ないような気がするんだけど。
違うのかな。
良く分からない。
だけど…。
「で、でも、アスカが嫌がるし…」
僕にとってはこっちのほうが大事かもね。
だって、後が怖いし…。
「惣流がどう思うかは問題じゃない!お前が話すか話さないかが問題なんだ!」
ちょっと待って、ケンスケ。
アスカがどう思うか。
それは多いに問題あるよ!
僕が二人に、アスカの事を相談しちゃった時も、その事で二人がアスカをからかったから、今、僕が苦労してるんだから!
「…そういえば、僕が前に相談した時も、そんな事言ってたよね」
僕が不満を込めて胡乱な目で見つめると、僕に詰め寄ってきた二人が狼狽え始めた。
「僕が相談した事で、その後、アスカをからかったでしょ。あの後僕がどんな目にあったと思ってるのさ。トウジ達も感じてるだろ?」
じとっと二人を睨みつけると二人が顔を引きつらせて黙り込んだ。
正直、今の僕を悩ませているこの状況は、この二人が作り出したとも言えなくない。
アスカを持て余して相談しちゃったのは僕なんだけどさ。
その事で二人がアスカをからかいさえしなければ、僕が今こんな風に苦労する事もなかったと思うんだよね。
思い当たる事があるのか、二人はばつが悪そうに顔を見合わせた。
何となく、言い出し易くなった僕は、アスカに対する不満を口にした。
「はっきり言って、アスカがあんな風になったのって、それからなんだよね…」
それっきり、僕が無言でじっと二人を見つめていると、真っ先にトウジが開き直った。
「そ、それがどないしたっちゅうねん!ワイは悪くあらへん!嫌なら嫌やっちゅうて、びしーっとぶちかましたったらええねん!」
それが僕に出来たらこんなに苦労してないよ!
今、それを目の前で見てたじゃないか、トウジ!!
僕のそんな気持ちを汲み取ったように、ケンスケがトウジに突っ込んでくれた。
「分かってないねぇ~。男だからこそ、そんな事言えないんだよ。なぁ、シンジ?」
でも、そんな事で僕に同意を求めないで、ケンスケ。
なんか、情けなくなってくるから。
曖昧に笑う僕を余所に、突っ込まれたトウジがケンスケに噛みついた。
「何でやねん!男やったらなぁ、こぅ、びしーっと…」
「じゃあ、委員長にびしーっとぶちかましてやれよな~、トウジ!」
「な、な、な、何でそこで委員長が出てくるねん!関係あらへんやろ!!委員長は!!」
「へえ~、ほ~、ふ~ん…?」
ケンスケは、ムキになって唾を飛ばすトウジを白い目で眺め始める。
途端にまごつきだしたトウジの顔を眺めているうちに、僕は思いついていた。
そういえば、僕とアスカの関係が変わってから、委員長とトウジがケンカする事が多くなったんだよね。
でも、その度にトウジは委員長に勝ててないんだよね。
なんだ、じゃあ、僕がアスカに勝てなくても当たり前なのかもしれない。
だって、男らしさにこんなにこだわってるトウジでも、委員長には勝てないんだもん。
男って、女の子に勝てないように出来てるのかも。
それなら、僕がアスカに勝てない事も説明つくよね!
なんだ、そっか!
そうだったんだ!!
僕は一気に目の前が開けたような気持ちになった。
今まで悩んでいた事が嘘のようにすっきりしている。
「トウジ、ケンスケ!」
僕は笑顔で二人に話しかけた。
悩みがなくなり、僕はとても気分が高揚していた。
「何や、センセ」
「どうした?碇」
僕の相談には乗ってくれた訳じゃないけど、悩みが解決したのは、やっぱり二人のおかげだよね!
「ううん、何でもないんだけど、僕、二人のおかげで分かったんだ!ありがとう、トウジ。ケンスケ!」
僕が笑顔で礼を言うと、二人はきょとんとして顔を見合わせた。
「いや、俺達は何もしてないぞ?」
「そんな事ないよ、ケンスケ。本当にありがとう」
だって、どうしたらいいのか今ではすっごく良く分かってるし。
それはやっぱり、トウジとケンスケと、こうして話してたおかげだよね、うん。
「野暮やで、ケンスケ!男がこうして礼を言うてんのや!ワシらは黙ってセンセの礼をうけとっといたらええねん!」
うん。
そうしてもらえると凄く嬉しい。
「そうか?そうだな」
照れくさそうにケンスケも笑った。
それから僕らは何だかおかしくなって、昼休みが終わるまで三人で笑い転げていた。

tag : LAS

拍手返信

04/05 逃亡者さんへ

返信遅くなってしまってすいません。
いつもありがとうございます。
おちゃらけた話にするはずが、あれよあれよと言う間にシリアス風味になってしまいました。
なんだか、書いていて、シンジをいじめているみたいでちょっとヤですね。
この山を乗り越えたら少し良い思いさせてあげようと思います。
拍手ありがとうございました。


04/16 JIMさんへ

いえいえ、こちらこそコメントありがとうございます。
何語ってしまったんだと恥ずかしく思っていましたので、とても有り難い一言でした。
一周年のお祝いまでいただき恐縮です。
拍手ありがとうございました。


その他拍手のみの方もありがとうございました。

tag : 拍手返信

一月経って

地震から一月経ちました。
あっという間に一月+5日経ってしまいました。
早いですね。
復興が進んでいる所。
状況が膠着している所。
新たな問題や相次ぐ余震に悩んでいる所など、色々あると思います。
だけど、今これだけ酷い目が出ているなら、次の目はきっと良い目が出ると思います。
だから諦めず、絶望せずに、それぞれの1日をそれぞれなりに過ごしていきましょう。
なんとか悲しみや苦しみとも、付き合っていけるようになってるはずです。
人はそんなに弱くないですし。
だけども、凄く強い訳でもないです。
被災してしまった人達は皆頑張ってます。
今は頑張るしかないから、頑張ってるんです。
だから無理はしないで下さい。
我慢はしないで下さい。
無理のしすぎ、我慢のし過ぎは良くないです。
これからも続く長い道のりです。
我慢を強いられる生活が続いていくからこそ、自分を大事にしてあげて下さいな。
一緒に歩いて生きましょうね。

偉そうに語ってしまってすいません。
私も負けずに頑張りますよー!
ついでにサイト一周年です。
震災ですっかり忘れてました(笑)

第七話

「父さんに、何をしたいんですか?」
シンジは父に対する複雑な気持ちを堪えて質問した。
自分の中に入り込んだ人間が、どんな事を考えているのか酷く気になる。
例え、自分に興味の無い父親だとしても、シンジにとってはやはり父は父だった。
顔をしかめて唇をかみ締めたシンジは、自分の顔が酷く優しげに微笑んだことに気付いて疑問に思った。
「大丈夫。シンジが望まないような酷いことはしないわ。シンジに選んで欲しいだけ。選んでくれたら、その選択を元に私のこれからの行動を決めるだけよ?」
「え?」
更に告げられた言葉はさらにシンジを混乱させた。
自分が一体何を選ぶというのだろうか。
「あのね、シンジ。これから私が話す事って結構酷い事なの。シンジのお父さんとお母さんの事、シンジは嫌いになっちゃうかもね。それを聞いた上でシンジに選んで欲しいの」
「僕は…」
シンジはその言葉に俯いた。
これ以上、父を嫌いになれることなんかないように思えた。
「父さんの事、好きじゃありませんから」
「じゃあ、お母さんは?」
「え…」
その問いかけに思わずシンジは顔をあげ、虚をつかれて黙り込んだ。
「母さんは…」
こみ上げてくる思慕の念に言葉にならない。
けれど、母はもう居ない。
シンジは沈黙してまた俯く。
「シンジ。シンジは私に嘘を吐いて欲しい?それとも、嘘を吐かないで欲しい?」
「嘘…」
「シンジが望むなら、私はシンジを騙して上げる。でも、それを望まないなら正直に答えてあげる。シンジは私にどっちを望む?」
「え…?」
シンジは優しげだった微笑みが、楽しげで意味深なものに変わっているのに感じた。
漠然と恐怖を感じ、とても重大な選択を迫られている事を理解した。
「シンジは自分が傷つくのが嫌いでしょう?私はシンジが嫌だと思うことはしたくないの。だから、シンジがどうしても傷つくのが嫌なら、いくらでも嘘を吐いてあげるし、傷ついたとしても嘘を吐かれるのが嫌なら、絶対に嘘を吐かないわ。どうする?」
「ど、どうするって…」
問いかけられた事柄に、シンジは眩暈を感じながら呟いた。
突然そんな事を言われても、すぐには判断はできない。
緊張に喉が渇き、シンジは喉を鳴らして問いかけた。
「なんで、僕にそんな事聞くんですか…?」
相手の意図が見えずに、シンジは酷く不安だった。
しかし、返された言葉は酷く軽いものだった。
「だって、私、シンジに嫌われたくないんだもの」
「……え?」
その一言でシンジが感じていた重圧が消え、かわりに酷く呆気に取られて呆然となる。
「それに、シンジが私の思っていた通りの子なのか確かめたいし♪ふふふ♪」
とても楽しそうな言葉に、シンジは開いた口が塞がらなくなる。
どう反応すればいいのか、本当によく分からない。
「ねえ、どっちがいいの?」
弾む口調で催促される。
「シンジはお姉ちゃんにどうして欲しい?初めての弟のお願いだもの。叶えてあげるわよ?」
愛しげに微笑みを浮かべた表情に、シンジはかっとなった。
「ふ、ふざけないでくださいよ!」
「あら、ふざけてないわよ?大事なことだもん。どっちがいい?」
「だから、どうしてそんな事僕に聞くんですか!」
「だからぁ、シンジに嫌われたくないからだってば。お姉ちゃんはシンジの事が好きだからシンジに嫌われたくないの!だから選んでもらうのよ?」
当たり前でしょうとでも言わんばかりの口調に、シンジは頭を抱えた。
「な、なんで?」
「だって、シンジは私の弟で、とっても可愛い良い子なんだもの♪どっちがいい?」
シンジには良く分からない理由で、良く分からない事を選べと言われ、シンジは混乱する。
「…なんで、そんな事を僕に選べって言うんですか?」
辛うじてそんな疑問を口にする事ができた。
「私の言うことを疑われたくないからよ」
真摯な響きのその言葉にシンジは言葉を失った。
「だからね?シンジ。どっちがいいか、選んで頂戴。シンジは私に嘘を吐いて欲しい?それとも吐いて欲しくない?どっちがいい?」
再度問われた言葉は、とても真剣な物だった。
シンジも、同じように真剣になる。
「…僕が選んだ通りに貴方はするんですか?」
「そうよ?」
「…僕を、騙したいんですか?」
思わず零れた猜疑心に、シンジは自分がくすりと苦笑するのを感じて動揺した。
「シンジ。シンジを騙したかったら、私、最初からこんな事をシンジに選んでもらわないわ。自分に都合のいいことだけをシンジが信じるような言葉を選んで、それだけを話してしまえばいいんだもの。でも私はね、それはしたくないの。シンジがされて嫌だと思うことはしたくないの。それをするのは私が嫌だから。だって、それがばれちゃったら、シンジ、私のこと嫌いになっちゃうでしょう?」
きっぱりと言い切られた言葉に、シンジは眉をひそめて困惑した。
そんな事を言われたのは初めてだったし、その言葉に嘘は感じ取れなかった。
どうすればよいのか分からなくなって、シンジは俯いた。
それきり、口を開くことも無く沈黙してしまった彼女のいう事を、シンジはいろいろと考えた。
確かに、傷つくのは嫌だ。
そして、信じて裏切られるのも嫌だ。
また捨てられるのは嫌だった。
「…僕は」
ぽつり、と零して、シンジは途方にくれる。
彼女の言うことを信じたくなっている自分を見つけて動揺した。
何者なのかも分からない、得体の知れない存在なのに。
それでも、自分に対する好意はすごく感じる。
自分が望めば、本当に彼女に騙されるし、彼女は嘘をつかなくなるんだと根拠の無い確信を抱く。
そうして考えているうちに、ふと、彼女の提案と、彼女の嫌なことが重なっていないことに気がついた。
思いついた可能性を確かめたくて、シンジは思い切って彼女に質問をする。
「あの。貴方は、僕に嘘をつきたいんですか?」
返答はすぐだった。
「ううん。でも、私が嘘をついてシンジが傷つかなくなるなら、いくらでも嘘つくわよ?」
思ったとおりの内容を含んでいるその言葉に、シンジは自分の頬に血が上るのを感じる。
どきどきと激しい動悸を抑えてもう一度尋ねる。
「どうして、ですか?」
「だって、私、シンジのお姉ちゃんだし。お姉ちゃんは弟を守らないと!」
そう言ってにっこりと笑った人を、シンジは信用してみようと思った。
もしかして、騙されていてもかまわないと思った。
この人が何を目的にしていても、それはきっとシンジにとって悪い事ではないと思ったから。
「僕は、誰かに、裏切られたり、騙されたりするのは…。本当は、嫌です…」
目を伏せて、漸くそう口にすると、ふわり、と酷く包み込むような笑顔になった。
シンジは、自分の顔がそんな風に笑える事を不思議に思う。
「わかった。シンジとの初めての約束ね!いいわ。私はシンジには嘘をつかない。それがどんなにシンジを傷つけても、本当のことしか、言わないからね」
酷く真摯な響きに、シンジも真剣になる。
「はい」
「じゃあね、早速だけど、単刀直入に言うわ。シンジのパパはね、このままだと、死んじゃうわよ?」
「……えぇ!?」
突然の事にシンジは呆然となった。
いくらなんでも、あの父が死ぬようには見えない。
けれど、彼女はたった今、シンジに嘘はつかないと約束したばかりだ。
そんな約束をして言った以上、彼女は本当のことを話している。
きっと。
そのはずだ。
「ど、どうしてですか!?」
「んー、ぶっちゃけちゃえば、シンジのママが居なくなっちゃったから、自棄になって、ママにもう一度会うために全人類巻き込んでサードインパクト起こして自殺しちゃう感じ?」
「父さんが????」
彼女の言うことが信じられなくて、シンジは更に呆然とする。
言われた内容も信じがたいものだが、彼女の軽い口調も信じられにくさを更に助長している。
しかし、じわじわとシンジはそれがとんでもない事だということを理解し始めた。
「あ、あの、サードインパクトって、使徒が起こすんじゃないんですか?」
「う-ん、使徒が起こすってわけじゃないわね。使徒を使って、人間が起こすのよ。セカンドインパクトみたいにね」
「え!?で、でも、セカンドインパクトは南極で使徒が…」
「それのきっかけを作ったのが人間なの。だから、使徒が起こしたというのは正しくないわ。人間が、S2機関を研究する為に、見つけた使徒を弄らなければ起こらなかった事よ。あれは、人災なの」
「そんな!じゃあ、僕たちは何のために!?」
今まで信じてきた事実を否定されていたのに、シンジは彼女の言葉をすんなりと受け入れていた。
受け入れている事に気付かないままで。
「使徒を倒すのかって?サードインパクトを起こすためよ」
「嘘だ!」
「シンジが嘘だと思うなら、嘘でもいいわよ?どっちにしても、使徒が襲ってくることには変わらないから。倒すことになるのには違い無いもの」
それが本当だとしても、シンジの現状はかわらない。
そう言う彼女に困惑しながらシンジは口を開いた。
「で、でも…」
「使徒を倒すだけなら、サードインパクトは起こらないわ。使徒を全部倒した後に、いくつかの要因が重なれば起こすことが出来るようになるだろうってだけよ」
シンジは無言を貫いた。
他に反応のしようがなかった。
シンジの理解の限界を超えた事を話されていて、夢のような感覚を感じていた。
しかし、彼女はシンジに決断を迫る。
「それでね、シンジに決めて欲しいの」
「え?」
「お父さんをどうしたい?」
「え!?」
迫られた事が意外過ぎて、シンジは咄嗟に反応する事は出来なかった。
「生かしたい?それとも殺したい?そして、生かしたいなら、お父さんの事を許す?それとも許さないで復讐する?」
そして、微笑みを浮かべたまま、父に対するとんでもない処遇を何でもない事のように、微笑みながら楽しげに提案してくる彼女に、シンジは恐怖を感じた。
背筋を冷たい物が滑り落ちた。

tag :

あとがき

エイプリルフールネタのLASの予定がLMKになっちゃいました。
アスカさんとシンジ君を喧嘩させたら、ミサトさんが動揺してしまって、あっという間にミサトさんと加持さんのお話になりました。
執筆は計画的に!(苦笑)

tag : つぶやき

LMK エイプリルフール

「何でアスカはそうなんだよ!」
「何よ!何か文句でもあるっての?」
「当たり前だよ!」
「はっ!アンタみたいなのにも文句があるだなんて驚きだわ~。いいわ、聞いてあげるから言ってみなさいよ!」
「言ったな!?」
「言ったが何よ!」
和やかな夕食を終えた後。
ぎりぎりとにらみ合いながらつばを飛ばし合う子供達を、傾けた缶ビール越しに眺めながらミサトはこっそり嘆息した。
何が原因だったか忘れてしまったが、突然こんな状態になるのは珍しい事ではなかった。
激務で疲れた体には、子供達のいがみ合う声は堪える。
少々げんなりとしながら、ミサトは二人の仲裁に入った。
「まあまあ、アスカ。そんなに怒らないで。シンちゃんも悪気があった訳じゃないんだし…」
とりあえず、気性の激しい少女から宥めようとしたのだが、その選択は裏目にでた。
「ミサトは黙ってて!そもそもアンタがそんな風にだらしないのがいけないんじゃないの!」
うえ!?
あたし?
少女の矛先が自分にむいた事にひきつりながら、ミサトは少女を落ち着かせようと試みた。
「そ、そう?」
「そうですよ!ミサトさんさえしっかりしてくれてたら、こんな事にはなりません!」
ええ!?
シンちゃんまで!?
その途端、普段内気で大人しい少年までが、眉をしかめた不機嫌そうな顔でミサトに矛先を向けてきた事に、ミサトは激しく動揺した。
突然、ひとりぼっちにされてしまったような焦燥感がミサトを襲う。
こんな事って、どんな事?
「ちょ、ちょっと、シンちゃん?」
「だいたい、分かってるんですか?僕達が喧嘩してるのはミサトさんのせいなんですよ!?」
ええええ!?
ミサトの脳裏に様々な事柄が閃光のように走り抜ける。
少年少女をからかって楽しんだ事や、家事を全部押し付けている事などなど。
どれもこれもミサト自身に悪気はなく、すべて、子供達に対する親愛の情がさせている物だった。
それについて、自分が悪いと思った事は一度も無かった。
それが今。
シンジに糾弾され、はっきりと自覚し、自分自身の行いに疑問を抱くようになった。
家事はともかく、子供達をからかうのは、少しやりすぎていたかもしれない。
素直にそう反省の気持ちが浮かぶ。
だが、無情にも少年の口から判決が言い渡された。
「今後一ヶ月、禁酒してもらいますから!」
「ちょ、ちょっとシンちゃ~ん」
少年の断固とした口調に焦りはしたものの、頼み込めば大丈夫と、鷹をくくったミサトはシンジにすがりついた。
と、その時。
珍しくシンジとミサトのやり取りを大人しくみていた少女が口を開いた。
「そうね、それは良い考えだわ。シンジ、あたしも協力してあげる。感謝しなさいよ!」
げえ!?
思いついたら即提案。
有言実行型の上に、抜群の行動力を備えた少女の思わぬ援護が、つい先ほどまで角突き合わせていた少年についた。
予想外の事態に、ミサトは本気で焦る。
少女は私生活に置いては、遺恨を大変根に持つ方であり、こんな風に即座に少年へ肩入れする事態は珍しかった。
その分、少女の本気度を物語っているように、ミサトには感じられた。
私が何したってのよ!?
焦りながら、事態を打開するために思考を巡らせていると、少年が少女に視線を合わせた。
その姿にミサトは安堵した。
先ほどまで憤慨していた少年の、少女に対するいつもの態度に一縷の望みが湧く。
恐らく彼は少女の申し出を断り、少女は激昂して部屋に閉じこもるだろう。
二人きりになってしまえば、少年を言いくるめるのは訳ない事。
安堵を感じてほっと胸をなで下ろす。
が、しかし。
「うん、お願いするよ、アスカ」
嘘お!
機嫌を損ねると、やはりわりかし根に持つ方である少年の口から、あっさりといがみ合っていたはずの少女の提案を受け入れる言葉がもれ、ミサトは軽く混乱した。
「任せといて!リツコにも頼んできっちり管理体制整うように手配するわ」
少女が何処からとも無く支給されている携帯端末を取り出し、コールし始める。
「頼んだよ!」
少年の力強い依頼に、少女は親指をたて、不敵な笑顔で応える。
ミサトは事態を飲み込めず、何も考えられなくなっていた。
「ちょ、ちょっと、シンちゃん?アスカ?冗談やめて。一体どういう事!?」
「冗談じゃありません。この機会にミサトさんには禁酒してもらいます」
「ええ!?」
きっぱりと力強く言い切るシンジに、ミサトは衝撃を受ける。
シンジとは良い関係を築けていると思っていたのに、それは自分一人だけの独りよがりだったのだろうか。
ミサトを動揺が襲い、信じていた物が崩れ落ちるような気持ちになった。
そこへ少女の嬉々とした声が響く。
「シンジ!リツコに連絡ついたわ。ネルフも協力してくれるそうよ」
「本当?それは良かった」
明るく軽やかな二人の声に、危機感を刺激されたミサトは必至に声を上げる。
「ええ?ちょっと、待ちなさいよ二人共!」
「何ですか?」
「何よ!ミサトの反論は聞かないわよ!」
二人に冷たい視線と口調を返され、ミサトは思わず気圧されて黙り込んだ。
「シンジ、ミサトの反論は無いみたいだからこのままでいいわね?」
「うん。勿論だよ」
それでも、一月も禁酒しなくてはいけないというのはミサトにとって死活問題だった。
「待ちなさいってば!何勝手に二人で決めちゃってるのよ!」
切羽詰まった声をあげる。
二人はそんなミサトを冷ややかに見守る。
「何か問題でも?」
「シ、シンちゃん…?」
「ミサトは黙ってて!」
「アスカもどうしちゃったのよ…?」
ミサトの知らない二人の姿を見せつけられ、目の前が暗くなる。
ミサトの心を見捨てられる怯えが支配していた。
上手く言葉が出てこない。
微かに口元を戦慄かせ、絶句するミサトに、アスカが端末を差し出してきた。
「ここにアンタ宛にリツコから電話がかかってくるわ。アンタの今後を左右するから、覚悟しておく事ね!行くわよ、シンジ!!」
「分かったよ、アスカ」
そういって、少女は壁に何かを引っ掛けると、なぜか大荷物を手にした少年を引き連れて、玄関から外へと抜け出して行った。
渡された端末を呆然と握りしめるミサトには、その時のおもしろがるようなアスカの表情と、申し訳なさそうなシンジの表情は目に入らなかった。
あっけにとられるミサトの手の中で、渡された端末が震え始める。
びくり、としながら、思わず通話状態にする。
親友も豹変した子供達に一枚噛んでいると聞かされた。
詳しい話を聞き出したかった。
反射的に耳に当て、捲し立てる。
「リツコ!?一体どういう事?詳しく教えてちょうだい!どうなってるの?」
だが、帰って来た声は親友の物ではなかった。
「よお、葛木」
よく耳に馴染んでいる飄々とした男の低い声。
それが誰の物であるのかに気付いた時、ミサトは頭に血が上った。
くわっ!か!加持い~!?
「何だよ、ご挨拶だなあ。相変わらずだな」
懐かしむような優しげな声に訳も無く感情を波立たせられ、ミサトは思わず詰問していた。
「そんな事はどうでも良いわよ!アンタ、なんで電話してきたのよ!リツコは!?」
「リッちゃん?リッちゃんの事は知らないな。俺はアスカに電話するよう頼まれただけだぜ?」
心底意外そうな声に、ミサトは訳が分からなくなった。
はあ!?
「伝言を預かってるんだよ。日付を見てみろってさ」
おもしろがるような声につられて、素直に先ほどアスカが壁にかけていったカレンダーの今日の日付に目をやる。
四月一日。
『えいぷりるふーる♪
 悪く思わないでね、ミ・サ・ト☆
 ごめんなさい、ミサトさん。
 頑張って下さい』
アスカが書いたと思われるへたくそな日本語の文字と、シンジの几帳面な字がミサトの目に飛び込んできた。
その瞬間、全てを理解し、こみ上げる悔しさとともに、ミサトの端末を握る手に力が入った。
「…それで?アンタがアスカに頼まれたのはそれだけなの?」
「そうさ。そう言えば理解出来るからってな」
楽しそうな男の声に腹立ちが募る。
「ついでに、二人は今日はネルフに泊まりだとさ」
「そう!教えてくれてありがとう!!」
怒りでこめかみを引きつらせて加持に応対しながら、ミサトは先ほどの二人のやり取りを思い返していた。
どうりで唐突に喧嘩が始まり、子供達らしくない対応が目立った訳だ。
全ては今このときの為の布石だったという訳か。
仮にもネルフの作戦部長を相手に良い度胸ね、アスカ!
シンジ君もアスカの悪のりに乗ったのね!!!!
屈辱に唇を噛み締め、昏く笑い始めたミサトの耳に、腐れ縁の相手の声が入ってきた。
「なあ、葛木?」
「何よ!」
いらだちをそのままミサトはぶつけた。
しかし、相手はそんなミサトを受け流すように穏やかな声のままだった。
「アスカを悪く思わないでくれよ」
世話係として長い付き合いがあるのは知っていたが、男の口から少女を気遣う言葉が出てくるのが、ミサトには面白く無かった。
「何がよ!」
不機嫌な気持ちは声に現れる。
「アスカは俺の為に人肌脱いでくれたのさ」
「どういう事よ!アンタもあたしをだまそうってわけ?」
してやられた腹立ちがミサトを冷静にさせてはくれなかった。
「いや、違うさ」
「じゃあ、何よ!」
穏やかな態度を貫く男も腹立たしかった。
察しのいい男の事だから、アスカたちの企みを知っていたはずだろう。
その上で、男も一枚噛んだのだ。
逆恨みに近い気持ちがミサトにこみ上げてくる。
「いつか結婚しよう」
「…へ?」
思わぬ事を突然言われたミサトは間抜けな声をあげて固まった。
「それだけさ。じゃあな」
思考が硬直している間に男は通話を終わりにしようとしていた。
「あっ!ちょ、ちょっと!待ちなさいよ!」
慌てて声をかけたが、耳に聞こえてくるのは無情な電子音だけだった。
ミサトの胸ににぶく甘い疼きが走る。
「今のって…」
動揺しながら、ミサトはふと、カレンダーの日付に目を移す。
アスカのつたない文字を見ても、もう子供達に対する悔しさや怒りはもう感じなかった。
「エイプリルフールか…」
短いメッセージに込められた子供達の気持ちに、ミサトは気付く。
くすり、と苦笑が浮かんだ。
「どっちだったのかしらね?」
苦笑でごまかしても、くすぐったい嬉しさは消えて行かなかった。
全てはあの男の嘘なのかもしれない。
でも。
それでも。
「ありがとう、アスカ。シンジ君」
先ほどの怒りとは全く逆の、親しみと愛しさを込めて、ミサトはこの機会を作ってくれた子供達の企みに感謝した。

tag : LAS

拍手返信

3/30 tomatoさんへ

お久しぶりです!
私もまさか自分が被災するとは夢にも思いませんでした。
けれど、地震の影響でしばらく家に帰れないほかは、特別困った問題はないので、とても恵まれている方だと思います。
むしろ、同じように今回の地震で被災された方達の境遇に胸を痛める毎日です。
それでもやはり、家に帰れないという事態は、今後に対しての不安が募っていくので、創作活動はおっしゃられる通り良い気分転換になっています。
こんなときだからこそ、日常生活を心がけて生活できたらなと思って頑張って行きます。
なんか、へこんでいるのは地震に負けたみたいで悔しいので!p(^∀^)q
tomatoさんもお体に気をつけて頑張って下さいね。
お心のこもった温かい励まし、ありがとうございました。


3/30 逃亡者さんへ

じつは、これ加持さんのお話にするはずが、LRGになってしまったんですw
私も書いていて、凄く新鮮で、楽しめました。
だけど、最初の予定ががががが…w
そして全て逃亡者さんのご推察の通りです!
オムニバス形式みたいにできたらなと、無謀な挑戦にtryしています。
逃亡者さんが楽しみにして下さったお話は、ラストの締めくくりに持ってきてみようと考える事だけはしています。
やっぱり、ハッピーエンドや大団円が読んでいて心が痛くならずに楽しめるので~(←チキンですw
拍手ありがとうございました。
また遊びにいきますねー^^


その他拍手くださった方もありがとうございました。

tag : 拍手返信

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